スイス核シェルター訪問レポート~
義務化緩和後も続くスイスでの避難シェルター建設。

チューリッヒの企業ビル 地下駐車場入り口

チューリッヒの企業ビル 地下駐車場入り口

今回ご紹介するのは、チューリッヒ市にある企業ビルの地下駐車場を利用した核シェルターです。

スイス最大の都市であるチューリッヒは人口が最も多く、国際空港もあるため、スイスの首都と間違われやすいですが(首都はベルン市)、日本ではジュネーブとも並ぶ有名な都市です。チューリッヒというと美しい古い街並みを思い浮かべますが、近代的な施設が並ぶエリアもあります。

地下駐車場のシェルター化はスイスではポピュラー

以前、高層マンションの地下駐車場を利用した避難シェルターをご紹介しましたが(過去記事はこちら)、今回の企業ビルもそうであるように、スイスでは地下駐車場を利用した核シェルター化は非常にポピュラーです。

日本でも地下施設を利用したシェルター化ができないものかと話題になることがありますが、そういった日本の議論と異なる点は、ビルを設計する段階でシェルターも盛り込んでいることです。つまり、後からシェルター化をしているという事ではありません(そういう例もあるかと思いますが・・・)。

企業ビル地下駐車場

スイスの企業ビルの地下駐車場

もちろんその背景には、長く続いたシェルターの建設を義務とする法律があったからでしょう。しかし現在はこの義務も緩和されておりますが、こちらのビルは公共的な施設としての機能も併せ持つこともあってか、緩和後の建設にもかかわらずシェルター化がされています。

もっともロシアによるウクライナ侵攻後、スイスでも改めてシェルターの重要性が見直されており、シェルター義務化の議論が再燃しています。

(関連記事: 「スイス核シェルターの歴史 第4回~ウクライナ侵攻後」

スイスの避難シェルター

色で識別された防爆扉

スイスの避難シェルター
スイスの避難シェルター

今回のレポートで収穫と言えるのは、地下駐車場のレイアウト図が掲示されていた点で、そこから全体像と竣工年を把握することができました。

また、通路の上部には最大車軸荷重制限の表示板があり、天井部の強度は1平米あたり耐久重量25~36トン前後と推定され、通常の天井部強度が28トン前後であるため、かなり強度の高い構造であることが伺えます。

スイスの避難シェルター

地下駐車場レイアウト図

スイスの避難シェルター

核シェルター駆体上部に表示されている最大車軸荷重制限

今回のケースとは少し違いますが、東日本大震災以降、企業が有事の際を想定して、いかに事業を継続させるかを計画しておく「BCP」という概念が注目を集めています。

人の命はもちろんデータ等の資産を守れなければBCPは達成できません。そのためにも今後は企業による、自社のためのシェルター整備も進めていく流れになるだろうと考えています。

日本核シェルター協会 スイス特派員 Hans Muller、事務局

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