政府のシェルター整備に関する方針発表を受けて

日本政府 シェルター整備に関する方針発表

歴史に残る貴重な第一歩。歓迎します

本日政府からシェルター整備に関する方針が発表されました。2022年12月の安保3文書にシェルター整備が明記され、シェルター整備の方向性が示されましたが、それから1年余りで政策と初版のガイドラインが発表されました。日本全国へのシェルター整備を最大の目的とする当協会としましては、まずは最初の第一歩を歓迎します。

内閣官房 国民保護ポータルサイト「武力攻撃を想定した避難施設(シェルター)の確保に係る基本的考え方について」

今回新たに設けられた「特定臨時避難施設」の対象者は避難誘導に従事する行政職員等及び避難に遅れる住民等であり、滞在期間としては2週間程度を想定しています。まずは限定した形になっていますが、初回の整備計画だけでなく今後の整備計画についても注目しております。

また、政策とともに発表された技術ガイドラインを見ますと、鉄筋コンクリートの地下シェルターであり、海外の民間人保護仕様と同様の構造です。瞠目すべき点としては避難や宿泊等の活動に必要な床面積の確保として一人あたり2㎡程度(簡易ベッドの設置等を考慮)+通行部分等となっている点です。従来の緊急一時避難施設では一人あたり0.825㎡でしたので、スペースが広がりました。これは長期滞在を考慮した結果の数字と言えるでしょう。

長期滞在を念頭に入れていることは、設備や必要な機能(室)からも読み取れます。例えばシャワー室、ゴミ保管庫、キッチン、ランドリールーム等の設置の考慮という文言がありますが、長期滞在を考えると必要な機能になります。

設備については、電気設備、給水設備、給湯設備、換気設備、空調設備等が網羅されています。もう少し仕様に深くふれてほしい部分はありますが、初版のガイドラインとしては充実しています。

しかし注文したい重大な点があります。今回のガイドラインではNBC攻撃(核生化学兵器)やEMP攻撃を想定していないように見られる点です。あまり考えたくはありませんが、今後数十年にわたって使用されていくことを考えると、やはり最悪の事態を想定して備えておかなければいけません。

2週間という滞在期間は残留放射線が1000分の1まで減衰する期間に相当するので、意識はしていると思われますが、NBCに対応する場合は換気装置などの設備が必要になります。また、通常ミサイルでも化学工場などが誤爆された場合は有毒ガスが飛散する可能性もありますので、そのような事態も想定しておく必要があります。

さらに、いま欧州で現実感をもって恐れられている電磁パルス(EMP)攻撃についても、今後早急に対策を講じる必要があるでしょう。

とはいえ、海外、たとえばシェルターの先進国として知られるスイスでも、ガイドラインが確立するまで4年程度かかっています。スイスではその後もガイドラインが度々更新され、いまに至っています(1980年代前半に大改訂がありました)。日本はゼロベースからスタートしていますので、当協会としても今後の動きに注目していきながら、シェルター議員連盟や地下シェルターワーキンググループを通して提言していきます。

ガイドラインの第二版も今後作成されていくと仄聞しています。そこでは、NBCや電磁パルスも考慮した形態になるように、当協会でもさまざまなラインを通じて、提言を進めてまいります。まずはシェルター整備への第一歩を踏み出したことを歓迎します。

日本核シェルター協会 事務局

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