避難シェルターの種類~守れる・守れない特長を知る

核シェルター入口

コンクリートが命を守る!

当協会に度々寄せられる質問の中に「核シェルターって地下に鉄筋コンクリートで造らないとならないのか?」というものがあります。

当協会の核シェルターモデルルームはスイスの民間防衛仕様で造っていますが、モデルルームの動画をご覧いただくとわかるとおり、地下に分厚いコンクリートで造っています。ドアも含めて鉄筋コンクリート造です。

▼核シェルターモデルルーム紹介動画

地下に鉄筋コンクリートで造らないとならないのは、核攻撃時の4種の影響である「爆風」「熱線」「初期放射線」「残留放射線」を防ぐためには鉄筋コンクリート造が必要になるためです。しかも、単なる鉄筋コンクリート造ではなく、「分厚い」コンクリートが必要です。鉄筋コンクリートの鎧というイメージです。

「地下に鉄筋コンクリートで造る」要因については、下記の動画でも説明しています。

▼動画「地下に鉄筋コンクリートで造る 3つの理由」

細かくは動画をご覧いただきたいのですが、核攻撃時の爆風や熱線を防ぐには鉄筋コンクリート(それも分厚い)がどうしても必要になります。また、放射線のうち、人体に多大な被害を及ぼす中性子線は金属では減衰させることができず、水素を多く含むコンクリート、それも非常に厚いコンクリートでないと減衰させることができません。

ということがあるので、どうしても分厚い鉄筋コンクリート造になってしまいます。

アメリカの目の前の危機は竜巻やハリケーン

こうした質問が相次ぐ原因を考えてみましたところ、行きついたのはなんとアメリカ映画でした!目にした方も多いかもしれませんが、アメリカ映画では、庭に金属でできた箱を埋め込んで地下室として使っているシーンが出てくることが多々あります。こんな画像です。

ストームシェルター

ここから地下にタラップや階段をつたって降りていくというシーンです。なんとなく見覚えがあるかと思います。これはたしかにシェルターはシェルターなのですが、核シェルターではなく「ストームシェルター」とか「トルネードシェルター」と呼ばれているものです。

アメリカのフロリダなどの州では、目の前にある危機として竜巻やハリケーンがあります。日本の建築物は地震に備えていますが、アメリカでは竜巻やハリケーンに毎年のように見舞われる地域があり、竜巻やハリケーンから数日間身を守るために、画像のようなストームシェルターと呼ばれている構造物を求める人が非常に多くいます。

公共のストームシェルターもあります。アメリカのハリケーンを伝える報道で、公共のストームシェルターに避難するために長蛇の列がつくられているのを目にした方もいるかもしれません。試しに「storm shelter usa」や「tornado shelter usa」で画像検索をかけると耐竜巻、耐ハリケーンの事業者が多数見つかります。

冒頭に掲げた質問が相次ぐのは、これらのアメリカの民間のシェルターと核シェルターを混同しているのではないかと気づきました。

対象物によって、シェルターの構造は異なる

日本ではこれまでシェルターになじみが薄かったので、世界にはいろいろなシェルターがあることやシェルターの種別を混同してしまうことがあるかもしれません。当協会でよく説明していますが、下記をご覧ください。

シェルターの区分

シェルターには複数の種類があります。旧ソ連を含む欧州や各国政府機関で主流なのが「核シェルター」です。地下に分厚い鉄筋コンクリートで造成するタイプのシェルターであり、「耐爆仕様」と「NBCR対応」が大きな特徴です。核攻撃時の4種類の被害影響「爆風」「熱線」「初期放射線」「放射性降下物」を防ぐ仕様となっています。

ひと昔前の防空壕や、現在アジア各地でシェルターと称している建築物は「防爆シェルター」に相当します。イスラエルでかつてよく造られていた街中のセーフルームであるMiklatも、この「防爆シェルター」に相当します。

また、アメリカの古いアパートメントなどでは「fallout shelter」というマークを掲げているケースもあります。これは文字どおり、フォールアウト、残留放射線の一種である放射性降下物、いわゆる死の灰を防ぐため、気密性の高い部屋に放射性降下物を除去するフィルターを設置したシェルターである。

核爆発時の爆風や熱線、初期放射線には対応できませんが、爆心地から遠く離れていれば残留放射線の一種である放射性降下物を除去することができます。かつてキューバ危機の後、ケネディ大統領が音頭を取って普及を推進したシェルターがこの「フォールアウトシェルター」になります。

そして、前述した「ストームシェルター」や「トルネードシェルター」。混同されがちですが、これはリスクとして想定しているのは核攻撃ではなく竜巻やハリケーンです。そのため、核シェルターとはまったく構造が異なります。

先般原子力研究の第一人者である奈良林直東工大特任教授の講演をうかがいましたが、アメリカでも核対応となると、スイスの仕様を参照しているとのことでして、やはり分厚い鉄筋コンクリート造とのことです。

日本では、上記の他に、火山シェルターや津波シェルターもあります。当協会でも今後マルチハザードシェルターを研究する研究部会を立上げて、本格的に活動していく予定です。

日本核シェルター協会
事務局

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