家庭用の核シェルターを自宅の庭に作る! 費用や条件など気になるポイント3選
2023年10月4日
当協会へ最近多い問い合わせに、家庭用の核シェルター建設に関するご相談があります。ここ数年、ロシアのウクライナ侵攻、北朝鮮のミサイル実験、そして様々な自然災害の影響もあり、日本でも避難シェルターの整備が話題になっていることが大きいと思われます。実際、政府も沖縄・先島諸島から住民用の避難シェルター建設を進めています。
そうなると「自宅に核シェルターがあれば」と考えるのは当然です。しかし次に湧いてくるのが、核シェルターっていくらするの?どのような条件があるの?そもそも意味があるの?という疑問です。(関連記事:核シェルターは意味ないのか?についてはこちら )
また、核シェルターといってもさまざまなタイプがあり、費用も異なれば、対応できる有事の範囲も異なりますので、本当のところ何を選べば良いのか分からないという方も多いと思います。そこで今回は核シェルターや避難シェルターの種類と、家庭用核シェルターを作る際に気になるポイントについて説明していきます。
シェルターの種類と対応できる災害
核シェルターは戦争や紛争だけでなく、地震などの自然災害にも有効な防災シェルターでもあります。とはいえ、シェルターのタイプによって防御できる種類が異なります。他のシェルターの特徴も知ることで、核シェルターが核シェルターである理由も理解できるかと思いますので、細かくみていきましょう。
核シェルター
地下に分厚い鉄筋コンクリートで造られたタイプ。扉やスリーブなど細部まで防爆仕様であり、放射性物質・サリン・VXガスなどの有害物質を除去するNBCR対応※の換気装置を有しています。当協会の核シェルターモデルルームもこちらに区分されます。
※N(放射線)B(生物兵器)C(化学兵器)R(放射性降下物)をまとめてNBCRと呼びます。
対応災害
核兵器(放射線、爆風、熱線、残留放射線)、生物兵器、化学兵器、爆弾、砲弾、地震、噴火、竜巻、風害、原発事故
防爆シェルター
こちらも地下などに分厚い鉄筋コンクリートで造られたタイプ。扉やスリーブなど細部まで防爆仕様である必要がありますが、有害物質を除去する換気装置は備えていません。昔の防空壕もこのカテゴリーに入ります。
対応災害
爆弾、地震、噴火、竜巻、風害
フォールアウトシェルター
気密性の高い空間に、放射性物質・サリン・VXガスなどの有害物質を除去するNBCR対応の換気装置を導入したシェルター。防爆性能は重視されておらず、あくまで空気環境を維持するための仕様となります。地上型で換気装置を備えたものの多くがこのカテゴリーに入ります。
対応災害
残留放射線、生物兵器、化学兵器、原発事故
火山シェルター
山頂付近や登山道に、鉄筋コンクリートや銅製で作られたアーチ型などの屋根を設けた仕様。噴火の被害の中でも噴石に特化しており、有毒ガスや溶岩には効果は低い。
対応災害
噴火
ストームシェルター
ハリケーンや竜巻から命を守るための地下施設。金属で覆われた物体(箱)を地中に埋めるタイプが多く、ハリケーンや竜巻が多いアメリカの民間で主流となっているタイプです。
対応災害
竜巻、風害
こうしてみると、類似の名称や形状のシェルターが存在していることが分かります。そして皆様が想像しているだろう核シェルターは、やはり最初に出てくる区分の地下型の「核シェルター」だと言えますし、この核シェルターの区分が最も多くの災害に有効な「防災シェルター」であるということも分かっていただけると思います。
それでは、この地下型の核シェルターを自宅の庭に建設する際の気になるポイントを解説していきます。(関連記事:地下型「家庭用核シェルター」のメリット5選! )
ポイント1. 土地調査が重要
まずはやはり土地の調査が重要になります。地盤も含めて建設予定地の調査によって建設費は大きく影響されます。核シェルターの場合は、必ず地下を掘ることになりますが、その深さは最低でも4m、5mとそれなりの深さになります。
そうなると地盤が軟弱なのか?硬いのかによって地盤改良などの費用が加算されます。当協会のモデルルームも地盤が軟弱であったために、大きな杭を大量に打ち込んで地盤改良を行いました。逆にもし硬い地盤であった場合は掘るのが難しいために、余計に費用が掛かってくる場合があります。
また、地盤だけでなく隣接する土地の環境にも注意しなければいけません。隣に建物が建っていた場合には、掘削の際に土が流れだしたり崩落するなどして、隣の建物の基礎や建物自体に影響を与えてしまうからです。
こうしたことからも、土地の状況は建設費に大きく関わってきますので、土地調査はしっかりと行う必要があります。
ポイント2. 建設費用はどのくらいかかるのか?
それでは実際、核シェルターの建設費用はどのくらい掛かるのでしょうか?これはもっとも気になるところで、当協会でも必ず聞かれる質問です。前述のとおり、核シェルターには分厚いコンクリートの他に、防爆用の設備や有害物質を取り除く換気装置が必要になってきます。つまり、家庭用核シェルターとはいえ、ただの地下室を造るのとは訳が違うという前提があります。
そのため、こういった特殊な設備も含めた上で、当協会が出した坪単価での基準は「約270万円」ほどになります。しかし、これはかなりザックリとした目安です。というのも、やはり地盤や隣接環境によって変化するからです。
また、ここに内装費は含まれていませんが、それは核シェルターには基本的に内装を施さないというのがあります。やはり爆撃の衝撃を想定していますので、例えば天井にシャンデリアを付けたり、壁に大きなテレビを設置すると、衝撃で飛んできて命取りになってしまうからです。核シェルター先進国のスイスでも、基本的に内装は施されていません。
この他にも、核シェルターまたは避難シェルター全般にも言えますが、食料や生活用品などの備蓄品が必要になってきますし、蓄電池も必需品と考えられますので、どのくらいの容量のものを用意するかによってコストも変わってきます。こういった備品等もこの坪単価には含まれておりませんので、この点も計画の際に検討しておく必要があるでしょう。
さらに言えば、最近では「電磁パルス(EMP)」の対策も行う必要性があるという問題が出てきています。実際シェルター整備が普及している国々では、すでにこのEMP対策に乗り出しています。このEMP対策を施すか、どの程度まで施すのかによってコストが変わることも知っておいてください。
ポイント3. 非常用脱出口を忘れないで!
核シェルターには(避難シェルターであっても)、必ず入口とは別に非常用の脱出口が必要になります。平時に使用する出入り口は、爆撃や地震などの衝撃で地上の建物が崩れ、瓦礫が堆積して脱出することができなくなる可能性が高いです。というより、核シェルターはそれを前提にした設計で造られています。
出入口が塞がれた場合、別途この非常用脱出口を設けていないと、せっかく助かっても密室に閉じ込められて命を失うことになってしまいます。当協会も参考にしているスイスの基準では、必ず瓦礫が堆積する恐れがない場所に非常用脱出口を設けることと定められています。このことを知らずに建設してしまった例が、実際に世の中には存在しているようなので注意が必要です。
この非常用脱出口についても土地の環境が大きく影響します。そして、その環境の中で出来る限りベストな設計というのがあると思いますので、やはりこういった知識と技術を持った設計事務所、建設会社に依頼する必要があります。
最後に重要点
家庭用の核シェルターは、自宅の庭に造る場合でも、新築で建物の下に造る場合であっても、特殊な設計と設備が必要になります。そのため、その土地の環境や施主様のご要望を踏まえた上で、一定の基準を満たした設計と施工が求められますので、建設される際はやはり安心して委ねられる設計事務所や建設会社を探す必要があります。
当協会の方でも、建設に関するご相談は無料で承っておりますし、安心できる設計事務所や建設会社をご紹介することがきますので、お気軽にお問い合わせください。
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