避難シェルターを整備する目的は何?国民保護という概念を正しく知ろう!

みなさん、そもそも核シェルターって何を目的として造られていると思いますか?もちろん、国民を保護するためですね。では、なぜ国民を保護するのでしょうか?

本日は、日本ではあまり知られていない「Civil Defense(民間防衛)」という国民保護に繋がる概念について説明させていただきます。

まずは国民保護の特殊標章という存在を知ろう!

まず、みなさん、このマークを見たことがありますか?

国民保護の特殊標章

このマーク、内閣官房のホームページや総務省消防庁国民保護室のホームページ、都道府県のホームページで見つけることができます。

国民保護の特殊標章と呼ばれているマークであり、有事の際に、文民を保護するために、国民保護を行う団体とその要員、民間人保護施設などを識別するために使用するマークです。

ジュネーブ諸条約第1追加議定書で定められている国際的な標章です。この標章を掲げた団体や避難所は戦争であっても攻撃されることはありません。

わたしは当協会に取材にいらっしゃる記者の方や自治体関係者には必ずこの問いを発することにしています。おおよそ1/3の方はこのマークについてご存知ですが、残りの方々は知らないようです。あまり認知されていません。

日本であまり知られていないのですが、戦争にはルールがあります。先ほど挙げたジュネーブ諸条約や追加議定書では、有事の際に軍人と文民を明確に峻別して、文民は守ることを規定しています。

このように、戦争にはルールがあり、有事に文民は保護されるべき存在として規定されています。このジュネーブ諸条約には北朝鮮ですら加盟しています。繰り返しますが、戦争にはルールがあり、有事の際、文民は保護されます。

国民保護は国際人道法で規定されている

さて、シェルターはこのジュネーブ諸条約などで規定されている文民保護、Civil Defenseを根拠としています。Civil Defenseを直訳すると市民防衛。日本では国民保護や民間防衛と呼ばれていますが、要するに国が国民を守る仕組みです。このCivil Defenseという概念から各国では国民保護の仕組みや組織、シェルターの整備を推進しているわけです。

核シェルターが人口比で100%超の普及率として知られるスイスでは、国防総省の中に「市民保護局」(BABS、またはFOCP)という部局が置かれ、そのもとに、国家緊急事態対応センターやシュピーツ研究所など、国民保護を行うための組織が置かれ、実際の運用は州政府内に設けられた市民保護調整部が行います。

スイスにおける国民保護を行うための組織図

BABS(FOCP)はスイスの民間防衛組織ですが、有事だけでなく自然災害対策も行っています。災害や有事の際、あるいは災害や有事に備えて、市民保護活動全般を担当します。

業務は非常に幅広く、災害・有事の救護・避難誘導・復旧支援活動、シェルターの運営・維持・点検・建設時のガイドラインの策定などから、有事の際のヨード剤の配布やNBCRの処理なども行います。

備蓄品の管理や配布もBABS(FOCP)が担当します。有事や災害発生時は消防や警察と連携を取り、BABS(FOCP)が主導して活動を行うことになっています。

今年の6月には、このBABS(FOCP)が久しぶりに、一般市民向けにシェルターの普及啓蒙を内容とする「Shelters」という小冊子を発刊しております。その内容は当協会の過去ニュースでご覧いただけます。

( スイス政府発行『Shelters』内容紹介:第1回第2回第3回第4回第5回

スイス政府発行小冊子『Shelters』

スイス政府発行小冊子『Shelters』

スイスでは子供のころからCivil Defenseの教育が行われ、例えば小学校の教育では森の中でのシェルター造りが行われている地域もあります。

スイスの小学校 森の中でのシェルター造り
スイスの小学校 森の中でのシェルター造り

スイスの小学校で行われている、森の中でのシェルター造り。木の枝を使ってシェルターを造る教育がなされており、シェルターは非常に身近な存在となっている。

スイスがここまでシェルターに力を入れているのは、永世中立国であり、自分たちの国は自分たちで守るという意識の表れであるとともに、人権意識が高く、人道教育が行き届いていることも挙げられるでしょう。

シェルターが普及率の高い国として、スイス以外ではフィンランドやノルウェーなど北欧の国々があげられます。これらの国々は人権意識が高いことでも知られています。この事実はシェルターが国民にとってどのような存在なのかを示唆しています。

本記事をお読みの皆様にもCivil Defenseについてじっくりと考えていただけると幸いです。

日本核シェルター協会
事務局

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