特定臨時避難施設の技術ガイドライン(第2版)発表を読み解く
本日は、6月28日に政府より発表された「特定臨時避難施設の技術ガイドライン」の第2版を読み解きます。この第2版は、本年3月29日にシェルター整備に関する方針と同時に発表された技術ガイドラインの初版に続くものですが、あれから約3か月弱での新たな動きということで、着実にシェルター整備が推し進められていることを実感します。それは6月に発表された「骨太の方針」にも表れており、そこにはより具体性を持った「シェルター」や「地下施設」という言葉が盛り込まれました。
新たに「平時の駐車場利用」を想定
さて、今回の第2版の中身ですが、端的に言えば「平時の駐車場利用」を想定し、それを踏まえて内容が追補されたということでしょう。具体的に述べれば、駐車場利用するということは、当然、自動車を駐車するスペースが必要ですが、有事を念頭に、このスペースの寸法を簡易ベッドを配置することを想定した寸法で計画するとしています(下図)。初版では会議室としての平時利用を想定した図が掲載されていましたが、新たに駐車場利用を想定した図が追加されています。

これにともない換気設備についても、駐車場利用時と有事の利用時どちらも踏まえて、必要となる換気量を考慮するとしています。空調設備も同様で、駐車場は天井が高いことと、排出ガスが発生することも踏まえた設備と構造が求められています。細かいところでは、車止めを着脱式にすることで空間の有効利用に配慮していたり、備蓄品例として、当然ですが簡易ベッドが追記されていました(初版ではベッドについてはスペースの確保のみ)。
出入口も駐車場仕様へ
さらに平時に駐車場利用するということは、会議室利用などと比べると出入口の開口部を広く設けなければいけません。そうなると初版で示されていた、爆風を緩衝するための計画に問題が生じるため、人と自動車の出入口は別々に設ける必要があります。そして自動車用の出入口には、新たに堅ろうな扉の設置が考慮されました。
こうなってくると考えなければいけないのが管理や運用です。有事の際には、駐車場内には車両が残る可能性がありますから、できるだけこの車両を搬出しなければいけません。そのため、あらかじめ搬出先の確保も求められています。また、そのための訓練の実施も追加されていました。さらに有事の際は、自動車の出入口を閉鎖することが前提で、閉鎖後は土のう等で防護するとし、そのための土のう等の準備も求められています。

スイスの駐車場を利用した核シェルター
エントランススペースや湧水対策も追補
他にも初版には無かった点では、施設の構成に「エントランススペース」が追加されていることです。このエントランススペースは、避難時の混雑を緩和したり、感染防止対策としての消毒スペースとしての利用を目的にしており、前室に隣接する形で設ける計画が追補されています。
さらに湧水対策も新たに追補されています。あまり詳細に触れていませんが「湧水の侵入や、路面での結露の発生などを抑制するための措置を講じる」としています。さらに、雨水や湧水、消火によって発生した水を適切に排水するための、水勾配や排水経路を確保することが明記されました。確かに、シェルター内での火災の発生は想定されますので、これは重要な問題です。排水設備については、初版でも排水ができない事態を想定していましたが、さらに消火水を使用した場合の問題も考慮していく必要があるということでしょう。
最後に
今回の第2版の巻末には「計画における留意点等」が記されていますが、そこには、収容人数や避難期間が同じであっても、ニーズや上部構造物などの状況により計画は異なること、また、収容人数や避難期間が異なった場合、各室の面積は単純に比例するとは限らないと強調しています。
この第2版を読んで改めて感じるのは、平時利用をどうするかは、設計や構造、管理・運用の計画に大きく影響を与えるということです。今後シェルターの普及を加速させるためにも、さまざまな平時利用のケースをクリアしていくことも重要であろうと感じます。