核シェルターは本当に意味がない!?よくある誤解を徹底解説-第3部|本日、YouTube動画版もアップ!

2023年8月10日

本日当協会のYouTubeチャンネルに「核シェルター 意味ない」の真偽判定をアップしました。本日のニュースはその連動企画です。

さて、当協会の7月7日付ニュースと8月3日付ニュースにて、「核シェルターは本当に意味がない!?よくある誤解を徹底解説」と題して記事を配信しました。
一部でほんの少しだけ話題になりましたが、本日はその第3弾。「核シェルター 意味ない」の真偽にさらに迫りました。

「核シェルター 意味ない」議論、三つの背景

先月7月7日8月3日に「核シェルターは本当に意味がない!?よくある誤解を徹底解説」というニュースをアップしました。

8月3日には「核シェルター 意味ない」論争(?)の背景には、大別して三つの議論があると記しました。

  • 核爆発は非常に恐ろしい被害影響をもたらすので、核シェルターに逃げ込んでも「意味ない」という議論
  • 核シェルターにずっと閉じこもっていないと「意味ない」という議論
  • 核攻撃を受けた後の人生を考えると茨の道が見通せる。自分たちだけが生き残っても「意味ない」という議論

今回は3に関して、当協会の考えを説明します。

簡単に1と2のおさらいを

本題に入る前に、1と2を超簡単にざっくりと説明します。詳細は下記の記事を改めてお読みいただけると幸いです。

1について。

核攻撃による被害影響の研究結果はいろいろとあるので、影響を防ぐための仕様をしっかりと整えておけば「核シェルター 意味ある」になります。鉄筋コンクリートのハコとして、ハードとしての仕様さえ核攻撃を対象にしっかりと設定しておけば、核攻撃に耐えうるシェルターになります。これは超簡単な説明でOKですね。

さて、2について。これは少し長くなります。

まず、武力紛争の兆しが出てきたタイミングで普通の国は非常事態宣言(緊急事態宣言)が出されます。ロシアのウクライナ侵攻でも、①2022年2月21日にロシアによるドネツクとルガンスク独立承認=武力紛争の兆しがあり、②2月24日にウクライナに非常事態宣言が発せられ、③2月25日にプーチン大統領による「特別な軍事作戦」を演説し、④数時間後に空襲開始となりました。

戦争は国際法で禁じられているので、宣戦布告ではなく「特別な軍事作戦」ですが、宣戦布告のようなものでしょう。武力紛争はいきなり起こるものではありません。そのため、「武力紛争の兆しを察知」→「非常事態宣言」→「実際の攻撃・空襲アラート」というフローを確立し、どのタイミングで核シェルターに避難するのかを確立しておけば、「核シェルター 意味ある」になります。

戦争は国際法で禁じられているので、現在は武力紛争になりますが、武力紛争であっても、なんらかの兆しがあります。古い話ですが、奇襲とみなされがちな1990年のイラクによるクウェート侵攻の際も、1990年7月17日にフセイン大統領による武力行使をほのめかす演説がありました。

この時点でクウェートも非常事態宣言を出して、いつでもシェルターにこもれるようにしていればよかったのですが、クウェートは警戒態勢をとっただけで、何にもしませんでした。クウェートがさっさと非常事態宣言を出して、シェルターにいつでも避難できるようにしておけばよかったのですが、、、

では日本におけるフローは? という疑問が出てきますが、いま政府の方でもシェルター整備を進めつつありますので、有事の際の避難フローもそう遠くないタイミングで出てくるでしょう。

ウクライナ侵攻

奇襲に思えたウクライナ侵攻でも武力行使の兆しはあり、非常事態宣言も出された

核攻撃であっても生き残る人数の方が多い

さて、長くなりましたが、本題に入ります。3の〈核攻撃を受けた後の人生を考えると茨の道が見通せる。自分たちだけが生き残っても「意味ない」という議論〉です。少し細かく見てみましょう。

核攻撃では爆心地では確実に死んでしまいますが、少し離れていると死なずに負傷したり、放射性物質による放射能障害で苦しんで死に至ることになります。

たとえば1945年8月6日に広島に落とされた原子爆弾では広島市では約14万人、長崎市では約7万3千人が、即時、あるいは約5か月以内に、核攻撃の直接的な影響(爆風、熱線、初期放射線などの物理学的威力)によって死亡しました。

8月6日の広島には約35万人がいたと考えられています。実は生き残り、爆風や熱線による負傷の後遺症や放射能障害に苦しんだ人の方が多かったのです。

死亡率は爆心地からの距離が500メートル以内でほぼ100%、750m以内で90%、1000m以内で70%、1250m以内で50%、1500m以内で30%となります。爆心地付近では即死ですが、少し離れた場所の場合は生き残りました。

爆風や熱線による後遺症や、初期放射線や放射性降下物(死の灰、黒い雨)による影響で生涯苦しめられた人の方が多かったのです。生き残らざるをえず、緩慢な死を苦しみながら迎えたり、長く生きても生涯後遺症に苦しめられました。

最初の議論に戻ると、そもそも「自分たちだけが生き残っても」自体が誤りなのです。むしろ生き残るのです。そして、シェルターに避難しなければ、爆風による内臓破裂や鼓膜損傷、呼吸器損傷による後遺症や、熱線による火傷による後遺症、そして放射能障害に苦しめられます。

しっかりとした仕様で造った核シェルターに逃げ込むことができれば、命を守ることができ、爆風や熱線、初期放射線による負傷や後遺症に悩むことがありませんでした。また、残留放射線が1000分の1まで減衰する2週間という期間をNBC対応の換気装置が備え付けられている核シェルターで過ごせば、放射能障害で苦しむことがありませんでした。

NBC対応の換気装置

NBC対応の換気装置があればフォールアウト(放射性降下物)の影響は防ぐことができた

核シェルターの整備が進めば「核シェルター 意味ない」は払しょくされる

この議論、実は日本と海外では大きく乖離している論点になります。まず「自分たちだけが生き残ってもしょうがない」という点ですが、海外だとこの発想自体があまりありません。

アメリカだと国土が広いので、フォールアウト(放射性降下物)だけ注意しておけば良いという発想になりますが、当協会が長年付き合いのあるスイスなど、欧州でも「自分たちだけが生き残っても仕方ない」という発想はありません。むしろ、核シェルターにこもって生き残るのだという意識が強い。この背景には、おそらく核攻撃に対抗できる核シェルターが普及しているという事実があります。

いざとなったら核シェルターに避難すれば、核兵器という凶器に対抗して生き残れるのだという発想になりますので、核シェルターがあることで国民の不安が解消されています。そのため、「核シェルター 意味ない」という発想自体が出てこないのです。

日本でもシェルターの整備が今後進められていきますが、シェルターの普及が進めば、「自分たちだけが生き残ってもしょうがない」という意識は変わるはずです。その時「核シェルター 意味ない」は払しょくされ、「核シェルター 意味ある」に変わることでしょう。

参考文献:外務省委託「核兵器使用の多方面における影響に関する調査研究」

日本核シェルター協会
事務局

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