ウクライナのシェルター考~上川外相記者会見の映像より

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空襲警報が鳴り響く中、地下シェルター内機械室が急きょ記者会見場に!

昨日の報道によりますと、上川外相はウクライナの首都キーウを訪問して、空襲警報が鳴り響く中、地下シェルターでウクライナのクレバ外相との共同記者会見に臨みました。空襲警報が鳴る中でも動じず、昂然と会見に臨んだ上川外相に敬意を払うとともに、今年こそはウクライナに平和が訪れることを祈ります。

日本(だけではなく平和な国)に住んでいればほとんど体験したことがないはずの空襲警報。おそらく上川外相も初めての体験だったのではないかと思います。平静とした態度で臨んだ上川外相の姿から「深沈厚重なるは…」という言葉を思い浮かべました。

さて、上川外相がクレバ外相と記者会見に臨んだシェルターの映像を見ますと、この場所は機械室です。空襲警報が鳴り響いたので、記者を収容できる広さが確保された機械室を急きょ記者会見場として使用したのでしょう。

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住宅の地下シェルターとは異なり、公共のシェルターでは各空間にさまざまな機能を割り当てます。エアロックや除染室、避難生活を送るシェルター居室だけでなく、発電機や電気関係の設備を設置する電気設備室、換気装置を設置する換気室、燃料保管庫、貯水タンク(プール)、医療室などなど。

大人数を収容することになれば、出産室、新生児室、さらに民間防衛組織の事務室(スイスではコマンド・ポストと呼ぶ)など、複数の空間が必要になります。当協会のスイス視察では改修中の医療センターのシェルターを訪問しましたが、電気設備、衛生設備、換気設備、それぞれの空間が設けられていました。

スイスの核シェルター 機械室

衛生設備が設置されている機械室

スイスの核シェルター 発電機

発電機が置かれた電気設備室。築50年以上なので化石燃料を使った発電機が置かれていた

スイスの核シェルター 換気室

ここは換気室。ダクトの下にNBCR除去のガスフィルターが取り付けられる。視察時はちょうど入替作業の途中だった

ちなみに、スイスではかつて2万人収容のシェルターがありました。演習の結果、迅速な避難が困難なので2000人収容に縮小されてしまいましたが、手術室や留置場までシェルター内に設けられています。

スイスの核シェルター留置場

シェルター内で犯罪をすると留置場に入れられてしまいます(当然ですが…)。

スイスの核シェルター 調理室

調理室もあります

スイスの核シェルター 手術室

手術室もあります

古いように見える設備機器。ウクライナ侵攻が唐突だったことがうかがえる

記者会見の解錠の映像を見ますと、天井に換気用のダクトと大量の電気配線が張り巡らされています。映像の向かって右側、クレド外相の左手側にあるのは衛生設備用か燃料設備用のパイプだと思われます。

また、スイスではシェルターの内装は基本的にはスケルトンですが、このウクライナのシェルターもスケルトンです。天井や壁が落ちてくることを防ぐためです。

照明器具もLEDではなく蛍光灯とハロゲンを併用しているように見えます。LEDを使用しないのは電磁パルス対策なのでしょう(LEDは電子部品なので高高度核爆発による電磁パルス攻撃では破壊されてしまいます)。

シェルターの造作はスイスであれウクライナであれ、どこの国であっても、リスクの設定はほぼ変わらないため、似たようなものになってきます。今回の映像を見ますと、設備機器はだいぶ古いような印象を受けます。おそらく冷戦後はずっと使われなかったため、設備の入替等はあまり行われてこなかったのではないかと思われます。

スイスもそうでしたが、昨年のウクライナ侵攻を受けて改めてシェルターの価値が見直され、改修や設備の入替が進められました。渦中のウクライナでは、そのような猶予がなかったのでしょう。

一昨年の2月までウクライナでも空襲警報は映画の中のものだったのでしょう。それが今では日常になってしまいました。冒頭にも記しましたが、ウクライナに一日でも早く平和が訪れることを願ってやみません。

日本核シェルター協会 事務局

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