核シェルター=風速405m/sに耐えうる防爆性能

2023年9月14日

核シェルターというと、日本ではNBCR対応の換気装置に注目が集まりがちです。しかし、大前提として、核爆発時の爆風、それも風速405m/sという猛烈な圧力に耐えられる構造が必要になります。本日のニュースでは 9月1日にオープンした当協会のショールーム に展示している防爆ソリューションを紹介します。

核シェルターでは防爆ソリューションが必須。塩ビ管は爆風で破損、熱波で溶ける

シェルター自体になじみの薄い日本では、核シェルターというとなぜだか「NBCR対応の換気装置」に注目が集まります。しかし、そもそもの大前提として、たとえばスイスでの核シェルター建設では、建築物の構造を爆風による過圧に耐えられることとして設定しております。

NBCR対応の換気装置は設備設計の範囲になり、建築的には取付も最後になりますので、まずは防爆性能の確保という構造が重要になってきます。スイスでは爆風のリスクを1バール=100kPaと定めていますが、この爆風による過圧を防ぐ防爆性能の確保が必要です。

防爆性能を担保した構造は、分厚い鉄筋コンクリート造が基本になります。まずは構造自体の防爆性能が重要になり、次いで大きな開口部をふさぐ扉の防爆性能の確保が必要になります。要するに防爆扉です。

防爆扉には、文字どおり入口に設置する「防爆扉」と、部屋間の間仕切り扉である「耐圧扉」、さらに非常用脱出口用の「脱出口扉(装甲扉)」の3種類に分けられます。「防爆扉」は複数のサイズが用意され、また観音開きで表面がスチールで覆われたNATOタイプや、地下駐車場兼用シェルターなどの大型シェルターで使用するスライディングタイプなど、さまざまなタイプが用意されています。

※NBCRとはN(放射線)B(ウイルスや細菌などバイオ)C(サリンやVXガスなど化学物質)R(放射性降下物)です。

核シェルターモデルルームの防爆扉

当協会核シェルターモデルルームの防爆扉。1MN/㎡の過圧に耐えられる。

核シェルターモデルルームの非常用脱出口扉(装甲扉)

非常用脱出口扉(装甲扉)。こちらはモジュール化され、内寸が800×600となっている。

NATOタイプの防爆扉

観音開きで表面をスチールで覆っているのがPTOと呼ばれるNATOタイプの防爆扉。外部で火災などが起こってしまうと、スチールを通して熱が伝わってくるので注意が必要です。

核シェルター造りでは、基本的な構造と扉を防爆タイプにすることまでは誰もが検討しますが、忘れられがちなのがスリーブやバルブ、配管などであっても、防爆性能を確保した製品を使用することです。シェルターが普及している国々では防爆タイプのスリーブや配管が一般的に流通しています。

当たり前と言えば当たり前ですが、普通の塩ビ管や、CD管やPF管を使ってしまうと、有事の際に爆風で崩れたり、熱で溶けてしまいます。建築を1バール=100kPa=風速約405mに耐えられる構造にしていても、スリーブが防爆タイプでなければ、爆風で塩ビ管が壊れたり溶けてしまったりして換気できません。せっかくのNBCR対応の換気装置が意味をなさなくなります。

それこそ「核シェルター 意味ない」になってしまいます。

スイスandair社の防爆スリーブ

スイスandair社の防爆スリーブ

スイスandair社の防爆配管

スイスandair社の防爆配管

防爆ソリューションを確認できるショールーム

防爆スリーブだけではありません。たとえば排気口や吸気口など換気の出入り口も開口部になります。この開口部に爆風が吹き込んできたらどうなるでしょうか?吸気口であれば、換気装置が壊れてしまうでしょう。換気装置が壊れてしまったら、それこそ「核シェルター 意味ない」です。排気口から爆風が吹き込んできたら、核シェルター内が汚染され、こちらも「核シェルター 意味ない」になってしまいます。

吸気口、排気口いずれも爆風が吹いてきたら閉じる防爆バルブが必要です。こうした防爆バルブもスイスでは一般的な商品となっています。当協会が 9月1日にオープンしたショールーム には防爆スリーブや防爆バルブなど、各種防爆ソリューションを用意して見学にいらっしゃった方に実際にご確認いただいております。

防爆ソリューション・ショールーム

シェルターソリューション・ショールーム(茨城県・つくば市)

なかなか防爆ソリューションを見る機会はないと思いますので、この機会に是非ともご覧ください。

日本核シェルター協会
事務局

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