全ての国民が避難できる!「スイスの核シェルター現地情報」~子供たちを守る小学校の地下シェルター
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当協会の記事をお読みいただいている方はすでにご存知かもしれませんが、スイスという国は核シェルターの普及率が100%以上あります。私たち日本人からするとやっぱり核シェルターは非常に珍しいですし、人によっては非現実的なものだと思っている方もいるかもしれません。でも世界的には決して珍しいものではありません。
特にこのスイスの普及率100%以上というのを見る限り、相当核シェルターが日常に溶け込んでいるのだろうと想像できるわけです。そこで、具体的にどのように普及されているのか?というのを、今回からシリーズで現地情報をお届けしたいと思います。今回は小学校に備えられた地下シェルターをご紹介していきます。
(関連記事:スイス特派員Hans Muller氏レポート )
子供たちは屋外に出ずとも避難できる
まずはこちらをご覧ください。


スイス・チューリッヒの小学校。
ここはスイス最大の都市チューリッヒの郊外にあるごく普通の小学校です。
スイスでは2011年まで新規の建物には、必ず核シェルターを設置するように義務付けられていました。ですから、もちろんこの小学校にも核シェルターがあります。では早速覗いて見ましょう。

階段の踊り場にある地下シェルターへの入口
こちらは日本の小学校でもよく見る階段の踊り場です。その奥に見えているのが核シェルターへの入口となる分厚い防爆扉です。これは地下の階になりますので、子供たちは外に出ずとも核シェルターに入ることができるんですね。

写真右には核シェルターに必要な換気装置が設置されています。
そしてこちら。一見するとなんてことない部屋ですが、写真右には、放射線などの有害物質を取り除く換気装置が見えますね。これがあるということは、ここは核シェルターであるということ。
換気装置以外は表面からは伝わりにくいですが、こちらはスイス政府の定めた核シェルター規格に沿って造られていて、例えば壁の厚さは何センチ以上とか、天井上の土かぶりの厚さは何センチ以上など、事細かく決められています。

中規模以上のシェルターは、衛生設備もしっかり整っている。
こちらは除染室に設置されたシャワー、トイレ、洗面所です。スイスでは、中規模以上のシェルターには、除染室を個室とは別に設けるよう定められています。例えば、避難が遅れた人で放射性物質が付着した可能性がある場合は、こちらで洗い流してから入室することになります。
ちなみに放射性物質が付着してしまった場合は、石鹸やシャンプーで体や髪の毛を洗い流しますが、コンディショナーやリンスは使ってはいけないそうです。逆に髪の毛などに放射性物質が定着してしまうからです。

収容人数30~40人の部屋に3段ベッドを設置。
こちらはシェルター個室に設置されたベッドです。やはりスペースを有効利用するために3段ベッドがよく使われていました。
また、スイスではこういった大規模なシェルターであっても、一部屋の収容人数は30人~40人程度で、それが複数の部屋に分ける形となっていました。

トンネル式の非常用脱出口。
こちらは非常用の脱出口です。トンネルをくぐって、建物から少し離れたところから地上に出る仕様です。これは核シェルターの上に建造物がある場合は、あまり近いと崩れた瓦礫が堆積して出れなくなるため、ある程度距離を取って設ける決まりがあります。

平時は音楽室として利用しているケース。
そしてこちらは別の小学校の写真ですが、平時は音楽室として使用しているという例です。画像をよく見ていただくと、部屋の右奥に換気装置が見えると思います。
核シェルターを普段は他の用途で使えないか?というのをよく聞かれるのですが、分厚いコンクリートは防音性が高いということで、スイスではこのように音楽室や音楽スタジオとして利用されていたりします。他にも、ダンスやスポーツクラブとして貸し出しているケースもあるようです。
ちなみに、スイスではこういった公共の核シェルターの管理・運用は、学校の先生や職員ではなく、自治体の設備担当者が行っています。

一見する普通の運動場。
そしてこちらはまた別の小学校の運動場です。特になんの変哲もない景色ですが・・・

運動場の下の核シェルター。
よく見ると運動場の地下に核シェルターの入口があるんです。

地下シェルターの入口となる防爆扉。
こちらの小学校もこれまで紹介した小学校と同様に、校舎の地下にも核シェルターがありますから、この運動場の地下のシェルターは、周辺住民の避難先にもなっていると思われます。

子供の時に林で作った秘密基地?
最後にこちらの一枚の写真をご覧ください。これ何だと思いますか?子供のころに林の中で作った秘密基地みたいですよね?
そうです、これもやっぱりスイスの子供たちが作ったのですが、実はこれ教育プログラムの一環で、子供たちにもシェルターを身近に感じさせるためだそうです。すごい意識の高さですよね。
最後に
いかがだったでしょうか?こうしてみると、日本でも避難施設として学校が指定されていることがありますが、それと同じような感覚で核シェルターも設置されているのだと知ることができます。
北欧やその周辺国では人権意識が高いとよく言われますが、まさに国民一人一人を守るという気概をここからも感じますし、それが100%を超えるというシェルター普及率に表れているのだと思います。
重要なことは、スイスでは有事の際に自分が入るシェルターが一人一人決まっているということ。日本でもJアラートが鳴って避難先に迷うなんてことがないような体制を、早急に整える必要があると思います。