シンガポールで既存の地下鉄をシェルター化! Andair社が技術協力

2023年8月11日

お問い合わせの多い、既存の地下空間のシェルター化という難問

最近当協会に寄せられる問い合わせ内容のひとつに、既存の地下施設や地下空間をシェルター化できないかというものがあります。意外と多い問い合わせ内容なので、取り急ぎ情報をアップします。

基本的にはケースバイケースで検証していくことになりますが、実は既存の地下空間をシェルター化するのは難易度が高く、コストパフォーマンスに優れているとは言えません。また、そもそもその地下空間がどのような目的でつくられていたのかも課題になります。シェルターにはシェルターとして必要な仕様がありますので、その仕様に則らないとなりません。

シェルター化でよく話題にあがる土被りやコンクリートの厚さがシェルターとしての仕様に適しているのかという問題だけではありません。
そもそもシェルターは気密性が高くなくてはなりません。隙間があれば、そこから爆風や熱波が入ってきますし、粉塵や有毒ガス、一酸化炭素が入ってくる可能性もあります。核攻撃であれば、放射性降下物が入ってきます。

理想は開口部や隙間が一切ない、鉄筋コンクリートのハコです。また、出入口などの開口部には防爆扉を後付けで取り付ける必要があります。
非常用脱出口を設けなくてはなりませんし、換気はどうするのか? 老朽化していたらどうするのか? 設備関係はどうすれば良いのか? など、課題をあげていくと数え切れません。しかし、まったく不可能なわけではありません。

大は小を兼ねる! 地下鉄で成功事例有。他の地下空間でもできる!

以前のニュースでもチラッとふれたり、ウェビナーでもお伝えしましたが、当協会が提携しているスイスのandair社はかつてシンガポールで既存の地下鉄のシェルター化に技術協力をしました。

新設の場合は地盤調査や測量から始めますが、既存の地下空間の場合、まずは調査から入ります。調査のポイントも大量にあり、それなりにたいへんだったそうですが、まずは調査を経て、次いで課題を洗い出します。

開口部をどうするのか、防爆扉をどう取り付けるのか、防爆扉のタイプは何にするのか、換気、空調、非常用脱出口など、前に挙げたような課題を机上でクリアし、施工に臨むとのこと。

Andairは地下鉄なので、非常に大きな規模だったそうですが、大は小を兼ねるではありませんけれども、この方法を当てはめていけば、既存の地下空間であっても可能とのことでした。

ただし、新設するよりもコストパフォーマンスは劣るのと、シェルター化工事中はその空間は使えなくなるなどの問題もあります。なお、一番困難な課題は防爆扉の取付になるようです。そもそも搬入自体がむつかしい。と、クリアすべき課題は大量にありますが、不可能なわけではありません。

シンガポールの地下鉄

andair社が技術協力したシンガポールの地下鉄

防爆扉

防爆扉は画像のような規格品だけでなく、NATOタイプやスライディングタイプもある。

日本核シェルター協会
事務局

この記事は役に立ちましたか?

はい いいえ