日本は備えているのか?電磁パルス攻撃!~人命とデータを守る!~

電磁パルス攻撃の解説図

昨今、北朝鮮のミサイル発射実験やロシアによるウクライナ侵攻のニュース等で、取り上げられることが多くなった電磁パルス攻撃(EMP攻撃)。なんとなく耳にしたことがある人もいるかと思います。

この電磁パルス攻撃の存在を知るとやはり不安になってきますし、日本ではどの程度対策がされているのか?などいろいろ不安や疑問が出てくると思いますので、この記事をお読みいただいて、電磁パルス攻撃や対策の現状を正しく知っていただければと思います。

▼動画でも説明しています

電磁パルス攻撃(EMP攻撃)とは?

では電磁パルス攻撃とはいったい何でしょうか?簡単に言いますと、核兵器を高い高度で爆発させると、強い電磁波が発生して、爆風や放射線は地上まで届かないが、この電磁波だけが地上に降りてきて、電子機器や電子部品を破壊させるという攻撃のこと。

この電磁パルス攻撃を受けると、いまの時代あらゆるインフラが電子機器や電子部品で成り立っていますから、エネルギーや通信、交通、金融といったあらゆるインフラが崩壊して、長期にわたり経済と日常生活を大規模に混乱させる可能性があるというわけです。そうなれば結果的に多くの人命が失われる恐れがあると指摘されています。

電磁パルス攻撃(EMP攻撃)を受けると

この電磁パルス攻撃ですが、具体的な対策方法はすでに確立されています。どういった対策があるかについては、下記の記事で説明していますのでぜひお読みください。

では海外での対策の整備状況はどうなっているのでしょう?スイスとアメリカの現状を見ていきましょう。

諸外国では対策されているのか?

まずは当協会もシェルターの基準として参照しているスイスです。

スイス

スイスでは2007年からシェルターの電磁パルス対策が進みましたが、築30年とか40年とか冷戦期に造られたシェルターに関しては電磁パルス対策が全くなされていません。しかしロシアのウクライナ侵攻後に、シェルターに避難しても電気が使えないとまずいということで、古いシェルターを活用しようとか見直そうという機運が高まってきて、シェルターの設備の入替や改修がこのところ急速に進んでいます。

例えば発電機をファラデーケージ(電磁波を遮断する容器)で覆ってしまうとか、ケーブルも導波管(電磁波を遮断する管)を使うとか、SPD(雷サージ防護装置)を使うとか、こういった対策を設備の入替や改修にあわせて一挙にやってしまおうと。ですので、いまは電磁パルス対策は非常に進んでいます。

ちなみに核シェルターに設置される放射線などの有害物質を取り除く換気装置も電磁パルス対策が施されています。

スイスの電磁パルス対策(EMP対策)

そして、アメリカではどうでしょう?

アメリカ

アメリカだといまから20年前くらいに、米国議会にEMP委員会(米国に対するEMP攻撃脅威評価委員会)ができて、そこでいろいろと議論されて、外部の研究者に委託してシミュレーションをしました。

そのシミュレーションの結果がこちら。

アメリカの電磁パルス対策シミュレーション結果

ニューヨークの上空135キロで10キロトンという広島型よりも出力の小さい核兵器が爆発した場合(参考:広島原爆投下は上空600m)、米国東部全域のインフラが被害に見舞われ、例えば原子炉の非常用電源が動かなくなって放射線の脅威にさらされてしまったり、工場や製油所、パイプライン、燃料貯蔵所などで安全装置が働かず、火災や爆発が発生し化学物質による汚染にさらされてしまいます。

また、電力インフラや電気インフラだけでなく通信インフラ、金融インフラなども崩壊してしまうでしょう。そうなれば復旧まで数年かかり、数百万人が避難を余儀なくされて、さらに長期化すると数百万人が死傷するという結果が出ています。

ということもあって、アメリカではこのEMP被害からの回復力向上を目的としたEMPレジリエンス行動計画が策定されたり、トランプ前大統領が「EMPへの国家のレジリエンス調整に関する大統領令」に署名して、対策が急に進みました。

アメリカの電磁パルス対策(EMP対策)

そもそもアメリカはIT産業がさかんなので、元々民間側の対策はかなり進んでいますし、もちろん軍事施設などの電磁パルス対策も非常に進んでいます。

では日本の現状はどうでしょうか?

日本では対策されているの?

残念ながらあまり進んではいないと言わざるを得ません。そもそも電磁パルスについてあまり知られていませんよね。この話をすると、今でも映画の世界の話みたいに捉えられてしまいます。

もちろん一部では危機感をもって進めているケースもありますし、政府としては2018年度から、電磁パルス攻撃に関する研究と、施設の防護手段の検討のための防衛予算が計上されています。

2022年には国会でも質問されましたが、政府の回答を一部ご紹介します。

(質問)政府が検討している防護すべき施設とは?

(岸田首相の回答)自衛隊施設

(質問)民間による電磁パルス攻撃対策への支援

(岸田首相の回答)検討している

現状まずは自衛隊施設を優先して進めているようで、実際に防衛省は昨年度に引き続き令和6年度予算案にも電磁パルス攻撃対策を盛り込んでいます。しかし民間に関わるインフラについては特に具体的な対策を進めるに至っていないというのが現状かと思います。

日本の電磁パルス対策(EMP対策)

政府でもこのような現状ですから、民間ではさらに進んでいくはずもありません。一時期、北朝鮮が核実験に成功した2017年頃にはメディアも採りあげたり、話題にもなりましたが、最近はあまり言及されていませんので、決して広く啓発されているとは言えない状況です。

当然このままで良いわけがなく、特に日本で非常に良くないのがデータセンターなんです。

人命とデータを守るシェルター。花崗岩の岩盤が有効?

国民の命を守る通常の核シェルターも必要ですが、いまの時代は重要インフラやデータも守る必要があります。ところが日本だとそもそもシェルター自体がほとんどありませんし、データセンターのシェルター化という話題もほぼ出てきません。

しかし、世界的にはデータセンターはシェルター化をしています。しかも鉄筋コンクリートの窓のない部屋や単に地下に造るだけでは心許ないため、例えば花崗岩の岩盤を掘ってシェルター化していたり、花崗岩の山の中腹にトンネルを造ってそこに建設したりしています。

これはスウェーデンのデータセンターが有名ですが、花崗岩は比抵抗が大きい、つまり電気を通しにくいので、電磁パルス対策に適切だと言われています。日本でも北アルプスや南アルプスなど花崗岩の岩盤はあります。こうした条件の良い場所にデータセンターを設けると良いと当協会では考えています。

人命とデータを守るシェルター

もう一つ問題なのは、日本ではデータセンターが特定の地域に集中していることが多いこと。しかし、一箇所に集中しているとその地域が自然災害やミサイル攻撃に見舞われた場合、非常に怖い。この問題にも取り組まなければいけません。

太陽フレアによっても発生する

さらに電磁パルスは高高度核爆発や単体のEMP兵器だけでなく、太陽フレアによっても発生します。実際に1859年9月1日にはキャリントンイベントと呼ばれる太陽嵐が発生してヨーロッパと北米の電報システムはダウンしています。太陽は一定の周期で活発化しますが、活発化する時期に太陽フレアの発生が指摘されています。

電磁パルスは戦争などの有事だけでなく、自然現象でも発生する非常に危険なものです。ですから重要インフラには核シェルターが必要なのです。重要インフラの拠点には必ず核シェルターを設けるか、拠点自体を核シェルター化してしまう必要があるのです。

太陽フレアにより発生する電磁パルス

最後に

いかがでしょうか?電磁パルス攻撃はもうSFの世界ではなくなりました。しかし日本ではかなりこのEMP対策は遅れているということになります。

電磁パルス対策については、当協会でもいろいろと検討している最中です。近々発表しますので、楽しみにお待ちください。また、EMP対策ソリューションは当協会のソリューションルームにも展示していますので、関係者の方はお問い合わせいただければと思います。

他にも電磁パルスに関する情報をまとめていますので、下記のリンクからぜひお読みください。

日本核シェルター協会
事務局

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