世界で進む国民保護インフラの強化 ー ウクライナと韓国のシェルター整備動向

ウクライナで建設予定の地下型核シェルター幼稚園

ウクライナで建設予定の地下型核シェルター幼稚園

(出典:https://kyiv.ukrainianwall.com/152028-kijiv-gotuyetsya-do-yaderki-po-mistu-pochali-staviti-protiradiaciyni-ukrittya

ロシアによる侵攻が続くウクライナ、そして北朝鮮の軍事的脅威が高まる韓国。両国では近年、地下シェルターや避難設備の整備が本格化しています。台湾有事へのリスクが高まる日本にとっても、これらの国々の国民保護に向けたインフラ強化の動きは参考にすべき重要な事例と言えるでしょう。

今回は現地情報をもとに、ウクライナおよび韓国における最新のシェルター整備事例を紹介し、参考となるポイントを整理します。

ウクライナで建設される地下幼稚園

ウクライナ南東部の主要都市ザポリージャにおいて、ウクライナで初となる「地下型幼稚園」の建設計画が進められています。CBRNE対応換気装置の導入は明確ではありませんが、放射線防護機能を備えているとのことで、ウクライナがフィンランドと民間防衛シェルター整備で連携している背景を考えれば、本格的な核シェルターであると考えられます。

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ザポリージャはロシアによる砲撃被害を受けており、子どもたちの安全が脅かされている現状があります。計画によれば、施設は855㎡の規模で、約100名の園児を受け入れられる設計とされています。また、大人も利用できる多目的コワーキングスペースも併設されるとのことで、平時における有効利用にも配慮した構成となっています。建設費用は約2億800万円と推定されており、今後も同様の計画が進められていくものと思われます。

ウクライナで設置されているロードサイドシェルター

ウクライナで設置されているロードサイドシェルター

(出典:https://dnipro.tv/news-dnipro/cherhovyi-po-mistu-pereviryv-stan-mobilnoho-ukryttia-v-parku-hloby/

この他ウクライナでは、モジュール式のいわゆるロードサイドシェルターの整備が進んでいます。断続的に空爆を受けている同国では、実際に街や公園を散歩中に被害にあって亡くなられるという痛ましい出来事が起こっているのが現状です。このロードサイドシェルターは、空襲時に瓦礫や衝撃波から身を守るために設計されています。

こうしたロードサイドシェルターはイスラエルをはじめとした緊迫した情勢の国々で見かけるものですが、緊急避難として重要な役割を果たしていると言えます。ひと言にシェルターと言っても、環境によって目的や求められる性能も異なり、限られた予算や労働力を踏まえると、柔軟にこうしたシェルターの整備も検討する必要があるでしょう。

韓国で地方自治体が建設する初の核シェルター

一方で北朝鮮との緊張が続く韓国では、ソウル特別市松坡区において集合住宅の地下3階に約1,000人収容が可能な核シェルターを整備する計画が進められており、2028年に完成が予定されています。

今回の計画は、地方自治体が民間向けに核シェルターを整備する初の事例ということで、これは2024年3月に発表された「ソウル防衛2030年」計画に基づくものです。この計画では、より強力な民間人保護対策の必要性が盛り込まれていました。

建設予定地は旧ソウル東部拘置所の跡地で、ここに床面積2,147㎡、地上22階・地下3階、合計1,240戸の住宅16棟を建設するとのこと。地下2階にはジムが設けられ、さらにその下の階に核シェルターが設置される予定で、CBRNE対応換気装置や貯水設備、トイレなどの衛生設備を備え、最大約2週間の避難に対応可能とされています。

2025年10月13日付のロイターによると、現在韓国には約19,000カ所(その内3,200カ所以上はソウル市内)のシェルターがあるようですが、大多数は核・化学・生物兵器への対応がされておらず、いわゆる防爆壕であるとされています。

韓国の緊急時における避難誘導標識

韓国の緊急時における避難誘導標識

その大半は、地下鉄や商業施設、地下駐車場とのことで、想定されるリスクに十分対応できていないのが実情のようです。こうした課題は日本でも共通していますが、韓国では近年、民間向けを含む本格的なシェルター整備に着手しており、国民保護インフラの強化が進められています。

最後に

ウクライナおよび韓国での核シェルター整備は、国家主導から自治体主導へと展開の幅を広げつつあります。こうした動きは、地政学的リスクが高まる近年において、核シェルターを国民保護インフラとして整備する必要性が一層高まっていることを示しています。

日本では同様の取り組みはまだ始まったばかりですが、当協会としては、先行する海外の事例に注視しつつ、引き続き日本における国民保護体制の強化に向けた取り組みに邁進してまいります。

日本核シェルター協会 事務局

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