フィンランドのシェルター企業 TEMET社が当協会へ入会!日本との協力体制を強化へ
フィンランド・TEMET社・本社
この度、世界有数のシェルター企業であるフィンランドのTEMET(テメット)社が、当協会へ正式に入会いたしましたのでお知らせいたします。
昨年7月、フィンランド駐日大使館の後援を賜り開催された当協会主催のフォーラムでは、同社によるプレゼンテーションが行われ、その先進的な取り組みが大きな注目を集めました。このフォーラムを契機に交流が深まり、継続的な意見交換を経て、この度の正式な入会が実現しました。
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世界をリードするフィンランドのシェルター企業
TEMET社は1953年にフィンランドで設立され、シェルターテクノロジー分野のグローバルリーダーとして業界を牽引している企業です。これまでに手がけたシェルター建設は累計で50,000件以上。本国フィンランドでは、400万人分の収容スペースを提供しており、同国の国民保護政策において重要な役割を担っています。
同社は、長年培ってきた経験と技術を活かし、グローバルに事業を展開しながら各地域の特性やニーズに応じて、高度な設計コンサルティングと柔軟な生産体制を提供しています。現在、インド、シンガポール、UAEに子会社を構え、さらに30カ国に及ぶ代理店ネットワークを通じて、85カ国以上への納品実績を誇っています。
当協会主催フォーラムで登壇されたテメット社 Sami Loppi氏
フィンランドにおける国民保護体制
同社のような先進的なシェルター企業が発展を遂げている背景には、フィンランドの成熟した国民保護体制が大きく影響していると考えられます。
フィンランドでは、有事に備えた国民保護として、計画・訓練からシェルター設置までを含む包括的な体制が整っています。1939年の初の国民保護法でシェルターの設置が始まり、戦後の一時休止を経て、1958年の第2国民保護法によりシェルターの徹底設置が義務付けられました。1972年には現代的な換気・空気ろ過システムを備えたシェルターが完成し、2011年には必要数に達したため、新規の設置は停止されています。
これらのシェルターのほとんどが、ミサイル攻撃や放射線、有害ガスなどに対抗できる、いわゆる核シェルターです。最大72時間の滞在を想定し、防爆扉や換気システム、非常脱出口、そしてトイレなどのサニタリー設備まで、必要な設備が完備されています。設置は法律で義務付けられ、所有者が設置と維持管理の責任を負います。普段は倉庫や駐車場、ジムやプール、フットサル場などとして使用され、緊急時には迅速に避難場所として機能します。
現在、フィンランドには約5万カ所の地下シェルターがあり、そのうち、約83%が核シェルターとして機能し、それ以外の施設であっても、そのほとんどが防爆性能を備えています。その結果、約480万人分の収容能力があり、これは実に総人口の約85%をカバーしているのです。こうした体制が実現しているのは、長い歴史を通じて築かれてきた国民保護体制が背景にあるのです。
TEMET社とフィンランドの地下シェルターを視察
TEMET社の経営層との会談後(フィンランドの本社にて)
今年5月、当協会理事長の池田がTEMET社を訪問し、経営層との会談を行い、同社が手がけた地下シェルターの視察や製品についての説明も受けることができました。そこで、TEMET社のシェルターソリューションを一部ご紹介します。
TEMET社製の換気装置と非常用脱出口扉(写真1)
写真1は左側に見えるのが非常用脱出口扉で、右側は換気装置です。換気装置は当然ながらCBRN(化学・生物・放射線・核)に対応できる性能を持ち、1時間あたりの換気量150m³/hに対応。ユニットを壁面に設置するため、床面を有効利用できるのが特徴です。衝撃にはショックアブソーバで備える構造で、これはアンカー打ち込み式を採用するスイス製とは異なる点です。同社はこの他にも大型施設に適した濾過システムや再生式二酸化炭素除去システムを展開しています。
非常用脱出口(写真2)
写真2は、非常用脱出口用の扉を開けると見える脱出通路。さらに奥には外界への扉が見えます。ちなみにこのような設備はフィンランド内務省が定める規定に従って製造されています。
防爆扉(写真3)
写真3は防爆扉で、TEMET社では装甲性の高い均質鋼板を採用。爆風の力を周囲の壁に伝達する緻密な設計がされているとのことです。コンクリートを現場で流し込むスイス製とは異なり完成品として納品されるため、現場での追加作業が不要で、品質そのままに設置できるのが特徴です。
この他にも、シェルター専用のバルブやスリーブといった、さまざまな防爆ソリューションを取り扱っています。同社はこうした設備にとどまらず、設計・施工・保守までを一貫して手がける、まさにシェルター分野におけるグローバルリーダーと言える存在です。
最後に
日本における武力攻撃に対する国民保護体制は、制度面・インフラ面のいずれにおいても整備が進んでいないのが現状です。フィンランドは、半世紀以上の歳月をかけて、国の責任として国民の命を守るための実効性のある仕組みを築いてきました。日本もまた、同じように長い道のりを歩む覚悟と、将来を見据えた現実的な政策が求められています。
だからこそ私たちは、先進的な取り組みを続けてきたフィンランドに学び、連携を深めることで、国民保護のあり方を一歩ずつ形にしていきたいと考えています。


