地下シェルターの必要性や選び方、費用を徹底解説【2025年版】

地下シェルターのモデルルーム

茨城県つくば市にある地下シェルター(日本核シェルター協会)

2025年、日本は「自分で身を守る時代」に突入しています。台湾海峡の緊張やウクライナ情勢、北朝鮮のミサイル発射など、世界の安全保障が不安定化する中、日本では自然災害も頻発し、もはや「想定外」は日常です。こうした状況で注目を集めているのが地下シェルター。以前は一部の富裕層や特殊な事情がある人の備えとされていましたが、今では一般家庭にも現実的な選択肢として求められています。しかし、地下シェルターに関する具体的な情報は少なく、導入には条件や費用、設備に関する理解が必要です。

本記事では、実際に地下シェルターを建設し、これまで20年以上にわたり世界基準の地下シェルターの情報収集と普及の啓蒙活動をしてきた日本核シェルター協会が、基礎知識から種類、費用、選び方まで、最新情報をもとに解説していきます。

地下シェルターとは、戦争や自然災害によって引き起こされる、あらゆる「命の脅威」から人間を守るために地下に設置される防護施設です。そして単なる地下室ではなく、外界がどれほど危険な状態でも、生存に必要な空気、水、電力、食料を確保し、一定期間生活を継続できる機能と堅牢な設計になっている必要があります。

地下室との違い

一般的な地下室は上階と同様の空間にすぎませんが、地下シェルターは“命を守るシステム”として機能する必要があります。後で説明するシェルターの種類にもよりますが、基本的に以下の条件が挙げられます。

ー 堅牢な構造

爆撃や風害による衝撃に耐えられる堅牢な構造である。

ー 気密性

外部からの粉塵や火災による煙、汚染された空気を遮断する気密性がある。また、これらを浄化するフィルターを備えた換気装置も必要である。

ー ライフラインの独立性

水や食料はもちろんのこと、非常用電源や医薬品、通信機器など、長期滞在を想定した備蓄とそのための備蓄スペースが設けられている。

これらの機能を持たない場合は単なる地下室に過ぎません。ただし、ミサイル攻撃や風害・地震などの場合は「一時的な」避難先として地下室は有効でしょう。

外部リンク:国民保護ポータルサイト)

地下シェルターが必要とされる理由

これまで地下シェルターというと日本では身近に感じるものではなく、非現実的なものという印象がありました。時には戦争を想起させるということで、備えること自体がはばかれることもありました。しかし昨今はその状況も一変しています。

戦争・核攻撃のリスクがあるから

日本を取り巻く環境は想像以上に緊迫しています。中国の軍事的台頭、北朝鮮のミサイル開発、ロシアのウクライナ侵攻、そして米中対立の激化。戦争が自国に及ぶリスクはかつてないレベルで、政府やメディアもそのことを直接・間接的に伝えているほどです。

自然災害への備えとして

日本は災害大国であり、地震、台風、豪雨、津波、土砂災害が全国各地で頻繁に発生しています。すべての災害に対応できるかはともかく、地下シェルターが避難施設として有効であるという認識が少しずつ広がってきていると言えます。

原発事故・放射線汚染の懸念から

福島第一原発事故が示した通り、放射線汚染は非常に脅威で、避難遅れが命取りになることが国民に強く印象付けられました。原子炉爆発の懸念も含め、いざという時に地下シェルターが必要であると考えられるようになりました。

テロ・パンデミックへの備えとして

新型コロナで証明されたように、感染症は国家機能を麻痺させます。加えて、生物・化学兵器によるテロが現実化するリスクも無視できません。長期間影響を及ぼす脅威であるため、これらを防ぐ長期滞在型の地下シェルターが求められるのも当然と言えます。

海外における普及状況

スイスの地下シェルター入り口

スイスの共同住宅に設置された地下シェルター入り口

海外では、シェルターとしての条件を満たした地下施設が広く普及している国々があります。その代表的な国がスイスで、この条件を満たすための細かな基準が明確に、そして体系的に定められています。現在、高性能な地下シェルターの普及率が約107%もあり、これは近年まで新設の建築物には地下シェルターの設置が義務づけられていた結果です。また、フィンランドやスウェーデンといった北欧諸国も同じような状況にあります。

アメリカでは、軍事施設やデータセンターといった公共施設を中心にシェルター化が進んでいます。個人では一部の富裕層を中心に核シェルターやプライベート・バンカー(地下要塞型住宅)が広がりを見せているようです。アメリカの場合は何といってもハリケーンや竜巻が発生する地域があり、それらに対応するシェルターが一般家庭にも備えられています。

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地下シェルターの主なタイプと特徴

地下シェルターの区分と想定リスク

シェルターの区分と想定リスク

それでは地下シェルターにはどのようなタイプがあるのでしょうか?まずはその前に、脅威の種類を知っておく必要があります。それはCBRNE「シーバーン」という言葉で表すことができ、これは戦争やテロ、災害で発生し得る化学(Chemical)、生物(Biological)、放射性物質(Radiological)、核(Nuclear)、爆発物(Explosive)の頭文字を取った略語です。さらに地震、風害、水害などの自然災害も脅威として加わります。これらの脅威から身を守る各種地下シェルターの種類を紹介します。

核シェルター

基本的に分厚い鉄筋コンクリート構造で地下に設置されます(スイス規格では厚さ30cm以上)。扉や配管スリーブなどの細部に至るまで防爆仕様となっており、さらに放射性物質やサリン・VXガスなどの有害物質を除去できるCBRNE対応の換気装置を備えています。水害を除くほとんどの脅威から身を守ることができるタイプと言えます。

防爆シェルター

こちらも地下などに設けられた、厚い鉄筋コンクリート造のタイプです。扉やスリーブといった細部まで防爆仕様であることが求められますが、有害物質を除去するための換気装置は備えていません。かつての防空壕も、このタイプに分類されます。

フォールアウトシェルター

気密性の高い空間に、放射性物質やサリン・VXガスといった有害物質を除去できるCBRNE対応の換気装置を設置したタイプです。防爆性能は重視されておらず、主に空気環境の維持を目的とした仕様となっています。そのため、必ずしも地下に限らず、地上に設置されていることが多いです。

ストームシェルター

ハリケーンや竜巻などの自然災害から命を守るための地下型シェルターです。金属製のボックス状構造を地中に埋設するタイプが一般的で、特にハリケーンや竜巻の多いアメリカでは民間用として広く普及している形式です。

このように単に地下シェルターといっても、さまざまなタイプがあり、対応できる脅威も異なることを知っておく必要があります。

関連記事:避難シェルターの種類~守れる・守れない特長を知る)

地下シェルターの選び方

具体的に建設を検討するのであれば、シェルターのタイプを選ぶ前にまずはリスク想定をどこにおくかを決めます。ミサイル攻撃を想定するのか?放射線も防ぎたいのか?風害だけ防げればいいのか?など明確にしましょう。

住んでいる場所がどのようなリスクにさらされているかによって、最適なシェルターが決まります。水害が多い地域であれば、風害だけのために地下シェルターを設置するのは避けるべきです。放射線だけを防ぐのであれば、必ずしも地下である必要がないかもしれません。

リスク想定が決まれば、それに適したシェルターを選び、信頼できる業者を探しましょう。

家庭用地下シェルターの費用

スイス基準の地下シェルター図

スイス基準の地下シェルター図 一例

それでは実際に地下シェルター建設にかかる費用はどのくらいなのでしょう。ここでは多くの脅威から身を守れる核シェルターを例に説明します。当協会にあるモデルルームも核シェルターであり、7.5人収容想定の比較的家庭用に近い規模になります。

家庭用の参考坪単価

核シェルターには爆風や熱風に耐えられる防爆扉や有害物質を取り除く換気装置といった特殊な設備も必要なため、これらを考慮した上での坪単価の目安は「約280~300万円」程度となります。ただし、昨今の物価高、円安により高騰傾向にあります。そして、これはあくまで概算であり、実際の金額は地盤の状態や周囲の環境によって大きく異なる可能性があります。

メンテナンス費用

構造物や設備自体の維持費に関しては、核シェルターは基本的に内装を施さない構造になっていることもあり、ほとんど費用は発生しません。特殊設備に関しても耐久性が高く、例えばスイス製の換気装置の場合、平時は封を開けずに維持しますので、フィルターの寿命は約30年となり、短期での交換の必要がありません。

補助金・助成制度について

残念ながら今のところ国からの補助金や助成制度はありません。しかし、普及のためには国からの補助が重要となりますので、当協会としても政府への働きかけを続けていきます。

関連記事:家庭用の核シェルターを自宅の庭に作る! 費用や条件など気になるポイント3選)

地下シェルター建設の注意点

これまで説明してきたとおり、地下シェルターは単なる地下室とは明らかに異なります。そのため、シェルターとしての機能を果たすためには、多くの注意点があります。ここでは、どのタイプのシェルターにするにしても知っておく必要がある注意点を説明します。

土地や周辺環境の制約

地下シェルター建設の最初の重要なステップに土地調査があります。地盤の状態によって建設費が大きく変わりますし、掘削の深さ(スイス基準では最低4m~5m必要)によっても費用が増減します。

軟弱地盤の場合、地盤改良が必要で、当協会のモデルルームでも大量の杭を打ち込む工事を行いました。逆に硬い地盤だと掘削が難しく、余計な費用が発生します。また、隣接地に建物があると、掘削時に土砂が流れ出し、隣家に影響を与える可能性も考慮しなければなりません。

まずは土地調査をしっかり行い、地盤や周辺環境を把握することが、費用と安全性を確保するために重要です。

建築基準法との関係

日本の建築基準法では地下シェルターの存在は明確になっておらず、法的には存在していない状態です。そのため、建築の確認申請の際は「倉庫」または「納戸」として申請されている現状があります。

しかし、シェルターが居室としての性質を持つことを考えると、収容人数は建築基準法に従う必要があります。つまり、一人1時間あたりの必要換気量は20㎥となりますので、導入する換気装置の1時間あたりの換気量から算出して収容人数を割り出す必要があります。

安心して任せられる施工会社を探すには?

地下シェルターは安全性が最優先されるため、設計や建設の業者は慎重に選ぶ必要があります。本来ならば国が定めた基準に従っているのかが、一つの判断基準になりますが、日本にはその基準がありません。そこで海外の基準を参考にするのが今のところ最善でしょう。

当協会はグローバルスタンダードであるスイス基準を参考にし、会員企業と共有しつつ、日本の風土に合うように日々研究を進めています。ご相談や施工会社のご紹介もしますので、ご検討中の方は一度ご相談ください。

地下シェルター建設のご相談はこちら

まとめ

地下シェルターは、人災、自然災害を問わず「命を守る備え」として、ますます重要性が増しています。かつては非現実的なものとされていた地下シェルターですが、その認識は大きく変わり、今では政府が主導して公共のシェルター整備を進めるまでに至りました。

ウクライナでは実際に地下シェルターに避難することで、多くの命が守られています。起こってからでは遅いという現実を忘れずに、備えていくことが大切です。

日本核シェルター協会 事務局

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