シェルター議員連盟が石破総理に提言!我が国にふさわしいシェルター整備の在り方に踏み込んだ対応を求める提言

首相官邸にて石破総理に提言書を提出するシェルター議員連盟

首相官邸にて石破総理に提言書を提出するシェルター議員連盟

6月11日、「シェルター(堅固な避難施設)および地下利用促進議員連盟」(以下、シェルター議連)の代表である古屋圭司議員、副会長兼幹事長 片山さつき議員、副幹事長兼事務局長 佐々木紀議員ら議連所属の6名の国会議員の方々に加え、先日シェルター議連のアドバイザーに就任した当協会の理事である務台俊介氏(元衆議院議員)が首相官邸を訪問し、石破茂総理にシェルター整備に関する新たな提言書を提出しました。

当協会はこれまで、シェルター議連総会において、たびたび活動内容や提言を発表する機会を得てきました。今回の提言書提出に先立ち、6月4日に開催された総会では、5月に実施したスイス訪問の報告を行うなど、国内外におけるシェルター整備の現状と課題について報告を行いました。

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課題が多いシェルター整備

我が国が、戦後最も厳しい安全保障環境に置かれている中、政府は先島諸島を手始めにシェルター整備の取り組みを進めており、すでに基本設計を終えた自治体もあるなど、着実に前進する姿勢を示しています。しかしながら、本サイトでもこれまでお伝えしてきた通り、課題も多いのが実情です。

今後、全国で進めるシェルター整備について、どのような内容のシェルターが確保されるのか、その優先順位をどう考えるのかなどの見通しは未だ立てられていません。現時点の政府の方針には、CBRNE対応*1の換気装置の設置やEMP対策が含まれていないという論点も指摘されています。

*1 化学 (Chemical)・生物 (Biological)・放射性物質 (Radiological)・核 (Nuclear)・爆発物 (Explosive)

シェルター普及に向けた提言

シェルター整備に関する課題については、シェルター議連は累次、総理に対し繰り返し提言を提出しています。令和6年6月には岸田前首相に対し、シェルター整備における関係省庁間の連携強化を提言し、実際にその方針がその場の岸田総理の決断で取り入れられる形となりました。また、シェルター議連の提言を受け、政府としても外国調査や国内の地下施設及び緊急一時避難施設の実態調査を行うなど、機敏な動きを見せています。

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しかしながら、シェルター整備の国際水準から見て、依然として多くの課題が残る我が国の現状を踏まえ、今回提出された提言は以下の5点となります。

シェルター(堅固な避難施設)の整備及び地下利用の促進に関する提言

  • 全国におけるシェルターの確保に関する実施方針の策定にあたっては、
    • 相手に攻撃を思いとどまらせるという「拒否的抑止力」や「リスクマネジメント」の観点とともに、「平時活用・有事機能発揮」の観点を重視し、目指すべきシェルターの在り方について方向性を示すこと
    • 専門知識を有する関係者からの意見を丁寧に間くこと
    • 自然災害に備えた避難所機能も兼ねるなど、シェルターを多目的に活用すること
    • 国内整備にあたっては、法整備を含め、適切に対応すること
    • 第三者機関を設立し、日本におけるシェルターの基準の策定・検査体制を確立すること
  • 令和6年度に実施した実態調査の結果も踏まえ、 シェルターとして活用できる地下施設の確保及び利用促進を一層進めること
  • データセンターに関して、電磁パルス攻繋等で破壊や誤作動が起きる懸念も指摘されていることから、諸外国の動きも踏まえつつ、その防護対策を地下化も含めて検討すること
  • シェルターの確保及び電磁パルス攻繋への対策については、先進的な取組を行っている外国の知見を活かすこと
  • 全ての関係府省が連携し、分野横断的にシェルターに係る取組を推進するとともに、政府全体としてシェルターに係る体制の充実を図ること

提言の背景と意義

シェルター議連のこの提言に関して、僭越ながら、協会の立場で背景と意義についてコメントさせて頂きます。

まず、シェルターを全国へ普及展開を促すためには国民の理解が不可欠です。我が国においても、シェルター整備は戦争を前提としているのではないか、そうした考えは、日本国憲法の平和主義の精神に反するのではないかとの根強い考え方があります。

そうした理念に対する考え方として、非常時に多くの国民が避難できるシェルターが備えられているということは、日本に侵攻しようとする国に対して、日本を攻めても死傷者を大きく出せないとなると日本に対する加害の効果が減殺され、日本人の戦意喪失に効果がないということになると、侵攻の意思を阻害する、つまり抑止力になるということ。

更に、自然災害の多い日本では、武力侵攻に限らず地震や風害などにも対応できること。こうした考え方を粘り強く説明していくことが重要です。これは当協会が推進する「マルチハザードシェルター」に通ずる考え方です。

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平時におけるシェルターの活用も極めて重要です。地下駐車場、スポーツ施設、食糧備蓄倉庫、会議室などとして日常的に利用されることで、収益性のある運用も可能となり、施設の更新や維持管理も継続的に行うことができます。また、ともすると形骸化しがちな防災施設が市民の憩いの場となることで、シェルターの認知度が進み、緊急時の避難が円滑に行われるメリットもあります。

上記のことを具現化するためには、シェルターの性能・安全性に一定の信頼性が担保されることが重要です。これは当協会がシェルター議連の場で提言してきたことでもありますが、この性能や安全性を客観的に評価できる基準と検査体制を構築する必要があり、そのためには独立した第三者機関の設立が求められます。

そしてそれを実現するためには、シェルター整備に関する立法措置も求められます。そして、政府においてシェルター整備をどの官庁が専門的に対応するかを法律上適切に位置づけることも決定的に重要です。

また、現代社会においてデータセンターの防御も重要です。データセンターは、行政、経済、医療などあらゆる分野を支える中枢インフラであり、その機能喪失は国家運営に直結する重大なリスクとなります。先般のスイス視察でも確認できましたが、諸外国では電磁パルス攻撃に対する対応など、この分野で先進的な取り組みが進んでいる国もあります。

雷の多い我が国には電磁パルスに関する要素技術に優れた知見がありますが、データセンター防護に関する応用面で遅れを取る我が国としては、そういった先進国の知見から学ぶべき面があります。

最後に

シェルター整備には、今回の提言や本記事だけでは網羅しきれない数多くの課題が存在します。これは多岐にわたる分野が密接に関わる複雑な取り組みであるためです。ゆえに、関係府省のみならず、高度な専門性を持つ民間組織も含め、国全体として緊密に連携する体制構築が不可欠です。

石破総理は、就任以前より一貫してシェルター整備の重要性を訴えてこられた方です。シェルター議連の場でも何度も議論に参加して発言されてこられました。今回のシェルター議連からの提言の受領に当たっても、法整備の必要性、政府内で主導すべき部署、諸外国のシェルター整備に関する詳細な調査、政府に加えて国会での議論の必要性などについて言及がありました。今後、石破総理の強いリーダーシップで、政府におけるシェルター整備の対応を着実に実行していただけるものと期待しております。

当協会も、シェルター議連と密接な連携を取りながら、政府の対応を支えてまいりたいと考えております。

日本核シェルター協会 事務局

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