スイス民間保護組織による家庭用核シェルターの定期点検
永世中立国のスイスでは核シェルターの普及率は100%を超えているというのは、これまで当協会の記事でもお伝えしてきました。これはスイス政府が1960年代からシェルター建設の義務化を導入したことによる結果です。
つまり、国家の一大事業としてシェルター整備を行ったわけです。もちろんその目的は、武力紛争が発生した場合、すべての国民が避難できる場所を持つようにすることです。これには永世中立国としての覚悟を感じます。
( 過去記事:「スイス核シェルターの歴史」)
このように早い時期からシェルター整備に取り組んできたスイスでは、築30年以上のシェルターも珍しくありません。中には50年以上のものもあるといいます。シェルターはいつ何時も使用できる状態に保たなければいけませんから、そうなってくると設備等の点検が重要になってきます。
当然スイスでは点検制度も整っており、民間では5年に一度定期点検が行われます。この点検業務は、国防総省の中の民間保護組織が担当しています。(民間保護組織について)
下記の写真は一般家庭に設置されている核シェルター内の換気装置になります。
VA20換気装置
換気するためのクランクハンドル
小型のガスフィルター
核シェルターの防爆バルブ
核シェルターの過圧防爆バルブ
この換気装置はかなり古いものですが、いまだ現役としてその役割に備えています。ちなみに、この換気装置は当協会が提携しているスイスAndair社のVA20と呼ばれる製品です。
「20」は1時間当たりの換気量を表しており、これはかなり少人数用のものとなります。現在流通している換気装置は電動式ですが(停電時は手動も可能)、こちらは手動のみの仕様で現在は生産中止となっている製品です。
このような古い換気装置が問題なく運用されているのも、定期点検の制度がしっかり整っているからと言えます。下の写真はチューリッヒ州民間保護組織の点検証明書になります。点検自体は数10分と短い時間で行われますが、必要に応じてその場で部品を取り付ける場合もあるようです。
今後日本でもシェルター整備が進んでいきますが、既に官民でさまざまな課題について議論されています。その中の一つに、シェルターの平時の維持管理があります。このようなスイスで既に行われているシェルター運営の仕組みを参考にしつつ、より日本の風土に合った仕組みの検討が求められています。当協会としても内外の研究部会を通して検討を進めて参ります。