ノルウェー政府が地下シェルター建設再開方針を示唆

ノルウェーの首都オスロの美しい街並み

ノルウェーの首都オスロの美しい街並み

ご存知の通り、ノルウェーはフィンランド、スウェーデン等と同じ北欧の国ですが、その中でもノルウェーは地理的にロシアと一部隣接しています。そのため、ウクライナ情勢は対岸の火事などではなく、地政学的に非常に急迫した問題となっています。

2025年1月10日、ノルウェー政府は国民の安全を確保するために、地下シェルター建設の再開を検討していることをメディア取材で明らかにしました。エミリー・メール法務・公安大臣は、取材の中で「我々の周囲には不確実性が高まっている。戦争や武力攻撃という『最悪のシナリオ』が起こった場合、我々は民間人を守らなければならない。シェルターは我々に必要な保護手段の一つだ」と答えました。

ウクライナではロシア軍の爆撃により、国民は地下シェルターへの避難を余儀なくされている状況が続いています。実際に地下シェルターのおかげで多くの命が救われている現状がありますので、今回ノルウェーでも再整備に取り掛かるようです。

現在ノルウェーには、約20,000基の地下シェルターがオスロを始めとする大都市部を中心に存在しています。収容可能人数は約250万人で、これは人口カバー率で約45%という状況です。その大部分は民間の所有物で、これは1998年まで、建設される新しい大型アパートに地下シェルターの設置が義務付けられていたことが大きいようです。

ノルウェーの地下シェルターの設置状況

ノルウェーの地下シェルターの設置状況
(出典:DSBーノルウエー民間防衛局https://kart.dsb.no/share/a44548720f7f

公共の地下シェルターで言えば、現在、一部のスポーツ施設や大ホール、公共ビル・地下駐車場などに設けられており、建設や維持・管理の責任はそれぞれの自治体が担当しています。ノルウェー政府は今後、延床面積1,000平方メートル以上の建物にはシェルター設置の義務を課していくとしています。その中でも2種類のシェルターを提案しているようで、一つには化学物質、放射性物質を除去できる換気装置を設置した、いわゆる核シェルター。もう一つは、既存の構造物を改造した、通常ミサイルに対抗できる地下シェルターです。

このあたりの進行計画は日本としても参考にすべきところでしょう。尚、ノルウェー政府は地下シェルターとは別に、民間防衛隊の拡大を8,000人から12,000人規模へ、そして食料自給率の向上を2030年迄に50%以上という方針を打ち出しているようです。

エミリー・メール法務・公安大臣は、「我々は現代の戦争について多くのことを学んできた。また、シェルターや避難所が民間人を守るために不可欠であることも分かっている。ノルウェーにもこれが必要であり、将来に向けた国の備えの一部でなければならない」と語っていますが、これはまさに日本においても当てはまることであり、私たちも北欧をはじめ欧州での動向を注視、参考にしていくべきだと考えます。

日本核シェルター協会 スイス特派員 Hans Muller、事務局

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