核シェルターの基礎知識1~
「核」シェルターと「フォールアウト」シェルター

2023年1月30日

核シェルターになじみが薄い日本では核シェルターの正しい知識を持つ人がほとんどいません。核シェルターは海外では「民間防衛」「市民防衛」の分野に入りますので、家電や自動車などの民生用のプロダクトとはまったく異なります。当協会で強く訴えておりますが、人の命を守るものですから、核攻撃に対抗できる造りでなくてはなりません。

地下型こそが核シェルターである理由

核攻撃による影響としては、「爆風」「熱線」「初期放射線」「残留放射線」の4種があります。残留放射線は「誘導放射線」と「放射性降下物」に分かれます。1Mtの水爆が高度約2,000mで爆発した場合、半径約4.2㎞以内のほとんどの建築物は爆風だけで崩壊、半径約17㎞以内の家屋は住めなくなる程度に爆風だけで破壊されると予測されています。爆風だけで眼球崩壊や鼓膜損傷、内臓破裂が起こる状況を想像してみてください。

さらに、熱線によって即死、皮膚の再生が不可能な状態になりますし、離れていても木造家屋や自動車などの燃料が多い日本では、火災という二次的要因による被害が生じます。もちろん初期放射線で人体は損傷しますし、放射性降下物は「ただちに健康に影響はありません」が、将来的には多大な被害が生じます。

こうした被害を最小限にとどめるための手段が「核」シェルターになります。そのため、核シェルターは地下で厚いコンクリートに覆われなくてはなりません。

核攻撃による瓦礫イメージ

「フォールアウト」シェルターとは?

最近よくメディアで採りあげられる、放射性降下物を除去する換気装置を取り付けただけの部屋や、換気装置を取り付けた物置のような造形物は、核攻撃に対抗するのではなく、遠くで核爆発が発生した時に、風に乗って流れてくる放射性降下物を防ぐ「フォールアウト」シェルターです。

原発事故や原発が通常兵器で被害を受けた場合にも有効です。ただし、フォールアウトシェルターでは、前述した爆風や熱線はもちろんのこと、初期放射線には対抗できません。放射性降下物による将来的な健康被害を防ぐものがフォールアウトシェルターなのです。

γ(ガンマ)線と中性子線の脅威の違い

よく誤解を受けますが、初期放射線のうち、γ(ガンマ)線は鉛などの金属で防ぐことは可能ですが、中性子線は水か分厚いコンクリートしか対抗する手段はありません。そして、人体に最も恐ろしい影響を及ぼす放射線が中性子です。γ(ガンマ)線に比べて寿命短縮は15~45倍、染色体異常は40~50倍、腫瘍誘発は3~200倍です。中性子を防ぐことができなければ、「核」シェルターではありません。

最後に

いまの日本には核シェルターに関する指針がないので、「核」シェルターを選ぶのか、「フォールアウト」シェルターで良いのかは、最終的には各個人が選ぶことになりますが、その前提としての基本的な知識は持っておきたいものです。

日本核シェルター協会 事務局

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