日本経済新聞1/27朝刊を受けて~事務局より

2023年1月27日

政府・与党の動きを歓迎します

本日の日本経済新聞の朝刊でシェルター整備が1面トップに掲載されています。まだお読みでない方は是非ともお読みいただきたいのですが、ようやく政府・与党がシェルターづくりに本腰を入れているようです。どのレベルの災害を視野に納めたシェルターになるのかは今後の課題かと思いますが、当協会としては政府の動きを歓迎します。

さて、記事に関連して3面でも一部ふれておりましたが、シェルターとしてパッと思いつくのは地下鉄です。地下鉄の話は以前のニュースでも述べましたが、地下にあるという点では核シェルターになりうる場所だと思います。ただし、地下鉄を核シェルター化するには、クリアすべき課題がいくつもあります。そもそも核シェルター化(通常のシェルターでも良いですが、、、)を目的としたつくりになっていないため、改装していく必要が出てきます。これを前提として以下パッと思いつく課題を列挙します。

課題1:気密性の確保

地下鉄は出入口が多数設けられているので開口部だらけ。地下鉄ですから当たり前です。いまの状態だと逃げ込んだら爆風・熱線・初期放射線で全滅してしまいます。せっかくシェルターに逃げ込んで全滅してしまうなんて…。ということもあり、気密性を確保する必要があります。配管含めて気密性という観点から見直す必要が出てきます。

また、地下鉄を利用している方はご理解いただけると思いますが、よく雨漏りしている箇所があります。老朽化が進んでいるとそういう箇所がいくつも生じます。このような箇所を洗い出して、気密性を保つ必要があります。

課題2:防爆扉、レイアウト他

地下鉄の出入り口には、現状シャッターが設けられていますが、シャッターは通常兵器の爆風であっても簡単に吹っ飛びます。当然核爆発では簡単に壊れます。核シェルターでは、入口に防爆扉を設けます。この防爆扉をどの個所にどのように取り付けるのかという課題があります。

また、核シェルターは避難する部屋だけではなく、除染室などの建設上はずせない空間が出てきます。それぞれの空間を耐圧扉で仕切っていくわけですが、どのように建設していくのかを検討していく必要があります。ちなみに一般的なレイアウトは、当協会が3月に発刊する会員向けテキストで詳説します。

課題3:換気装置と収容人数

昨日と本日のニュースでもお伝えしておりますが、核シェルターは密閉された空間になります。密閉された空間は厚生労働省の方で換気の目安として一人あたり毎時必要換気量30㎥/人という空気を入れ替える基準があります。換気量を考えておかないと酸素不足で死んでしまいます。

そのため、核シェルター(対化学兵器、細菌兵器も同様ですが)には放射性降下物を除去する換気装置が必要になりますが、収容する人数によって、換気装置のグレードを選ぶ必要がありますし、ひとつの核シェルターには収容する人数の制限が生じてしまいます。

では、収容人数を超える避難者が生じた場合はどうすればよいのかという課題が生じます。一人くらいなら追加しても良いか、というわけにはいきません。全滅します。避難指針が課題となります。下記ニュース記事「核シェルターの避難指針」「続・核シェルターの避難指針」もあわせてお読みください。

課題4:換気装置の吸気の位置

そもそも換気装置の吸排気をどこに設けるかという課題もあります。せっかく換気装置を取り付けたにもかかわらず、吸気口付近で火災が発生していたら、一酸化炭素中毒でこれまた全滅。熱い空気が入ってきても全滅してしまいます。火災の発生から逃れられる場所を見つける必要があります。

では高い場所に取り付ければよいのか? と思いがちです。しかし、地上の建物は、近隣の某国が所有している1Mtクラスの水爆が高度2kmで爆発した場合、爆心地から半径19㎞以内は基本的に分厚いコンクリートの梁を残してほとんど崩壊していると考えておいてください。

通常兵器しか使用していないウクライナで地上の建物がほとんど崩壊していた映像は記憶に新しいことでしょう。わたしはビルの梁(だったと思う、たぶん)から鉄骨がぶら下がっている映像を見てゾッとしました。核爆発はアレが広範囲で起こると思っておいてください。そのため、換気装置の吸排気をどこに設けるのか周辺の状況なども含めて実地調査が必要になります。

課題5:非常用脱出口

核シェルターには非常用脱出口という空間が必要になります。要するに避難出口です(核シェルター用語では非常用脱出口と直訳風になります…)。攻撃段階が終わり、2週間経過すると、核シェルターから出ていくことになります。2週間というのは空中を浮遊している放射性降下物が地面に降りてきて落ち着く期間の目安です。地面は放射能で汚染されていますので、注意が必要です。

この2週間経過した後に核シェルターから脱出する出口が非常用脱出口です。というのも、進入路が崩壊している可能性が高いので、核シェルターには必須です。この非常用脱出口をどこに設けるのかが課題となります。

地上は崩壊瓦礫の山なので、崩壊瓦礫が非常用脱出口を覆っていては逃げ出せません。崩壊瓦礫を避けた場所に設けることになります。スイスなどでは崩壊瓦礫を避ける位置の指定なども指針で出されています。木造建築物や自動車など、燃料が大量にある日本ではより注意が必要です。

課題6:備蓄品

どの程度の人数を収容するのかにも関係しますが、2週間過ごすための保存水や食料、それに蓄電池や発電機なども必要になります。トイレットペーパーや医薬品、その他備蓄すべきものは大量にあります。そもそも寝るための簡易ベッドは用意できているのかなどの課題もあります。こうした備蓄品を普段はどこにしまっておき、どのように配布するのかといった指針も必要になります。

課題7:シェルター内の指針

シェルター内部での過ごし方もマニュアルが必要になります。病人が出てきたらどうするのか、けが人はどうするか、赤ちゃんはどうするか、介護が必要な人は?などなど。2週間という期間を想定すると、食料の配布の方法次第では暴動が起こる可能性もあります。犯罪にも目を光らせなければならず、そのあたりの利用指針を確立することが必要です。

最後に

と、パッと思いついただけでも大量にあり、より詳細に検討したら課題と解決案だけで1冊本が書けてしまうほどです。ただし、地下鉄はそもそも地下にあるので、核シェルターに転用するには良い場所ではあります。課題は多々あるとは思いますが、一つずつクリアしていけば、日本版核シェルターになる可能性は高いでしょう。今後の動きに期待しています。

なお、日本経済新聞には何十年にもわたって、核シェルターを追い続けている素晴らしい編集委員の方がいらっしゃいます。皆さま是非ともお手に取ってお読みください。

日本核シェルター協会
事務局

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