核シェルターの避難指針~事務局より

2023年1月26日

先日当協会のプレスリリースを出した後、メディアの方、建築家、建設会社から問い合わせが多々ありました。お問い合わせいただいた方と話をしている中で、ある課題が浮き彫りになりました。それは核シェルターの避難指針です。今後核シェルターは個人用だけでなく、自治体が建設する中規模以上のタイプが間違いなく増えていくでしょう。では、中規模以上の核シェルターが増加した場合、どのような問題が発生するでしょうか?

たとえば核シェルターは密閉された空間なので、換気装置の関係で収容人数が決められています。では、ある核シェルターの収容人数が30人だとして、収容人数を超えて避難してきた人が一人いるとします。その一人を断るのでしょうか? それとも一人くらいならとその場の判断で入れてしまうのでしょうか? 断るのであれば、どのように断るのでしょうか?

避難民

古い漫画の話になりますが、『北斗の拳』ではケンシロウの兄トキが収容人数を超えてしまうため、自ら核シェルターに入らず、そのために被ばくして死を待つという場面があります。このシーンを読んだ子どもの時、「ひどいな」と思いましたが、核シェルターの正しい知識を吸収した今では収容してはならないと即答できます。トキが正しかった、と。

いやしかし、今ではさらに次の疑問も出てきます。そもそも大人数を収容できる核シェルターがあるのに、トキが入れる核シェルターはなかったのか? と。

そもそも断るのは誰なのか? 海外からの長期滞在者は見殺し? 会社で仕事をしている最中はどうすればよいの? など、いまの日本には避難指針がありません。また、なぜ収容人数を超えてはならないのかという知識も市民の間では共有されていません。共有されていないので、核シェルターに入れるか否かで傷害事件が起こる可能性もあります。たとえばスイスでは、自宅の地下に核シェルターがない場合は有事の際に入る公共の核シェルターが決まっています(有料です)。また、公共の核シェルターの利用指針なども定まっています。

核シェルターは建設してしまえばそれでOKなのではなく、避難時の指針も定めておく必要があります。そして、避難指針を作成するのは国になります。23日から通常国会が始まりました。さすがにそろそろ日本でも本格的な議論が始まるものと期待します。

日本核シェルター協会
事務局

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