事務局より新年のご挨拶と報道での懸念点

2023年1月4日

新年あけましておめでとうございます。日本核シェルター協会は、本年は本格的に活動を開始します。詳しくは1月6日発表のプレスリリースをご覧ください。

さて、昨年後半から核シェルターに関する報道が多々出てきておりますが、当協会として懸念する点が2つほどあります。

ひとつは、核シェルターの定義です。当協会では、核爆発にともなう「爆風(衝撃波)」「熱線」「初期放射線」「残留放射線(誘導放射線と放射性降下物)」の4種類の影響を防ぐことができる建築物を核シェルターとして定義しております。そのため、当協会では、最近の報道記事に見られるような「放射性降下物の影響を防ぐ換気装置を設けた部屋や建築物」は核シェルターと考えておりません。4種のうちのひとつ(残留放射線)の、さらに一部しか防ぐことができないので、放射性降下物の影響を防ぐ効果しかない建築物は「フォールアウト」シェルターです。

そもそも爆風だけでも相当な過圧が考えられますので、基本的には地上の建築物は核シェルターにはなりません。また、放射線のうち、中性子線を防ぐには水素を多く含む分厚いコンクリートと土が必要ですので、やはり地下に設ける必要が出てきます。スイスなど核シェルターの普及が進む海外では天井や壁が地表面上に出ている場合の構造は厳密に指定されています。

もうひとつは、政治家や有識者がよく口にする「地下鉄が核シェルターになる」という言葉です。当協会では、「地下鉄はその名のとおり地下にあるので、核シェルターに改造できる構造をそもそも有している。ただし、そのままでは核爆発の4種類の影響に耐えられないので、緊急時に核シェルターとして運用するためには改造が必要である」という正しい(が長い)コメントが報道では端折られていると好意的に解釈しています。

核シェルターの知識を少し持っていればすぐにわかるように、現行の地下鉄はそのままでは核シェルターにはなりません。というか今のままで収容してしまったら、避難した人々が死んでしまいます。空気が入ってくる箇所には放射性降下物を防ぐ換気装置が必要ですし、地上に通じる出入口には爆風や熱線や初期放射線を防ぐための防爆扉が必要です。今のままでは放射線や放射性降下物は入り放題ですし、どこか一か所から熱波が入ってきたら、焼け死んでしまいます。

気密室や除染室もないので、たとえば駅の一部を気密室や除染室にする必要があります。保存食や水などの備蓄も必要ですし、汚染された服を着替えるための着替えも必要になります。排泄物をためておくピットと攻撃後段階での排泄物の処理も重要です。もともとの構造は核シェルターには向いていますが、実際に核シェルターに転用する場合は課題が山積みです。

そもそも政治家であれば、どのような場合に地下鉄を核シェルターとして運用するのか、何人まで収容しても良いのか、収容人数を超えてしまった場合はどのように入場をお断りすべきか、収容にはだれを優先させるべきかなど、避難指針にまで言及していただきたいものです。というか元旦からミサイルが飛んできている段階なので、早急に国民保護法に書き込むべきです。

なお、ウクライナに地下の施設が多々あるのを昨年ネットの報道でよく目にしましたが、旧ソ連は冷戦期に核シェルターを熱心に建設していました。80年代に書かれたアメリカの市民防衛の本ではソ連が核シェルター建設に熱心なことを羨むくだりがあるほどです。

以上が当協会事務局が昨年の報道を通じて感じた懸念点です。今年はこれらの懸念が払しょくされるように、当協会も情報を発信していくつもりです。みなさま今年もよろしくお願い申し上げます。

日本核シェルター協会
事務局

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